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2026年04月24日

各位

株式会社日本総合研究所


脂肪肝の重症化を防ぐ医療連携体制などの提言レポートを発表

~新規肝がんの5人に1人は脂肪肝が原因 検査診断・治療アクセス向上が急務~



 株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 内川淳、以下「日本総研」)が主催する「我が国におけるMASLD/MASH患者の検査診断・治療アクセス向上に向けた有識者会議」(注1)で策定された、「我が国におけるMASLD/MASH患者の検査診断・治療アクセス向上に向けたレポート」(以下「本レポート」)を発表します。
 本レポートでは、代謝機能障害に基づく脂肪肝であるMASLD(Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)およびMASH(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis、代謝機能障害関連脂肪肝炎)(以下「MASLD/MASH」、注2)の早期検査診断および治療アクセス向上の実現をテーマに、解決すべき課題と具体的な対策の提言がまとめられています。
 本レポートは、以下からご覧になれます。

「我が国におけるMASLD/MASH患者の検査診断・治療アクセス向上に向けたレポート」
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2026/0424.pdf
「我が国におけるMASLD/MASH患者の検査診断・治療アクセス向上に向けたレポート」(概要版)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2026/0424_summary.pdf

■本レポートの背景と概要
 MASLD/MASHは、肥満や肥満症、糖尿病、脂質異常症などが原因となって、肝細胞に脂肪が蓄積することで発症します。近年、MASLD/MASHは国内外で急増しており、日本総研の推計では、国内で成人の約4人に1人に当たる約3,200万人が罹患しています。本疾患は、将来的に肝硬変や肝がんに進行する疾患であり、日本総研では、肝がんの新規発生者数のうち、MASLD/MASHを要因とする肝がんの割合は最大で5人に1人(4.9~19.1%)と推計しています(注3)。さらに、MASLD/MASHは肝臓疾患にとどまらず、心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中など)を引き起こすことも明らかになっています。愛媛大学の研究によれば、MASLD/MASHを要因に心血管疾患を発症する割合は、心血管疾患を有する患者の17.0%と、高血圧や糖尿病(国内の大規模な疫学調査より引用)と同水準の 割合に上ります。
 MASLD/MASHは国民の健康へ影響を及ぼすだけではなく、医療費への影響も大きいと考えられます。MASLD/MASHが重症化して肝硬変や肝がんへ移行すると、MASLD/MASHを治療するだけに比べ医療費は2.5倍ほどに膨れると日本総研は推計しています。このように、国民の健康寿命延伸や医療費適正化の観点から、MASLD/MASHに対する肝疾患対策推進は重要であり、今後の対策推進が期待される領域です。
 本レポートでは、MASLD/MASH患者の検査診断・治療アクセス向上を目指し、有識者と共に、現状を把握した上で目指すべき姿と解決すべき課題を整理し、6つの対策を取りまとめました。

■わが国におけるMASLD/MASHの医療連携体制の課題
 MASLD/MASHは多くの国民が罹患し、肝臓疾患や心血管疾患の原因になることもある危険な疾患であるにもかかわらず、診断率は低く、12%(注4)と報告されています。これは、MASLD/MASHが無症状のまま気づかないうちに進行することや、MASLD/MASHの危険性について国民や医療従事者など各ステークホルダーからの理解が不足していることなどによるものと考えられ、治療を受けないまま重症化してしまう患者が増加しているのが現状です。
 また、健康診断によるスクリーニング体制、専門医への紹介基準、治療アクセスの確保などの対策が、必ずしも十分に整備されているとは言えません。そのため、MASLD/MASH患者が健康診断→かかりつけ医→専門医療機関の一連の流れに沿って適切に紹介されないケースが少なくないのが実態です。
 国民の健康寿命延伸や医療費適正化の観点から、早期から検査・診断を行い、治療アクセスを改善させること、MASLD/MASHの重症化を防ぐことは喫緊の課題として対策を進める必要があります。


■実施すべき対策
対策① 市民・患者に対する疾患啓発活動
 MASLD/MASHは自覚症状がないまま進行しやすく、健康診断で異常を指摘されても放置してしまう患者が少なくありません。MASLD/MASHについて、疾患自体や危険性の認知向上、早期受診を促す啓発活動、高リスク患者に対する自治体からの受診勧奨が必要と考えられます。

対策② 医師に対する疾患啓発活動
 MASLD/MASHの診療は専門医だけでなくかかりつけ医が担う場面が多くなりますが、疾患の危険性に対する認知が低く、見逃されている患者が存在する可能性があります。かかりつけ医向けにMASLD/MASHの危険性や、適切な検査・診断方法等に関し、医師に対する疾患啓発活動や研修会を実施することが重要です。

対策③ 医療連携体制の構築
 MASLD/MASHの疑いのある患者に対し、どのように患者連携を行い、継続的な検査診断・フォローを行うことが望ましいかなどを明らかにした、患者連携プロセス案を作成することが重要です。また、MASLD/MASHの疑いのある患者の診断や治療が提供できる、かかりつけ医療機関や専門医療機関を見える化することが必要です。
 さらに、かかりつけ医療機関の中でも、肝疾患の診療を積極的に担当しており、肝機能検査の設備が整った施設については、地域の患者連携においてリーダーシップを発揮し、かかりつけ医療機関と専門医療機関の架け橋になることが患者の処置を漏れなく実施する上で重要です。

対策④ データ・エビデンスの蓄積
 制度設計を進める上では、MASLD/MASHの実態を正確に把握する必要があります。医療費拡大、労働力損失、介護負担増大といった社会全体の疾病負担の大きさを示す指標や、予防や保健指導の重要性を示唆するデータを蓄積していくことで、適切な対策の実施が可能になります。

対策⑤ 政策立案者・自治体に対する疾患啓発活動
 MASLD/MASHは生活習慣病の側面を持つため、医療の枠組みだけでなく、健康診断・保健指導や地域の生活習慣改善施策とも密接に関わります。MASLD/MASHの対策を確実に実行していくため、MASLD/MASHの危険性や予防の重要性に関して、政策立案者や自治体に対し疾患啓発活動を実施し、政策や保健事業に反映させていくことが重要です。

対策⑥ 健診データの法定項目への「血小板」追加
 肝臓の線維化が進行した場合、肝硬変や肝がんに罹患しやすくなることが知られており、この線維化は血液検査における血小板数の値から推測することができます。しかし現在、この「血小板」は健康診断の法定項目に含まれていないため、多くの自治体では健康診断時に得た血液からデータを取得しておらず、健診結果に表示されません。真に治療を要する患者を早期に見つけることを可能とするため、健康診断の法定項目に「血小板」を取り入れることが求められます。(注5)



(注1)「我が国におけるMASLD/MASH患者の検査診断・治療アクセス向上に向けた有識者会議」はMASLD/MASH患者の早期の検査診断・治療アクセス向上に向けて解決すべき課題・実施すべき対策を明らかにすることを目的として、2回の有識者会議を実施しました。
〇構成員 (敬称略・座長以外50音順)
 竹原徹郎〔座長〕日本肝臓学会理事長/関西労災病院病院長
 赤羽たけみ   日本肝臓学会専門医、指導医/宇陀市立病院院長
 芥田憲夫    日本肝臓学会理事/虎の門病院肝臓内科部長
 小川佳宏    日本内分泌学会代表理事/日本肥満学会常務理事/
         九州大学大学院医学研究院病態制御内科学主幹教授
 高橋宏和    日本肝臓学会専門医/日本糖尿病学会糖尿病専門医/
         佐賀大学医学部付属病院肝疾患センター長
 立道昌幸    東海大学医学部基盤診療学系衛生学公衆衛生学教授
 中澤祥子    東海大学医学部基盤診療学系衛生学公衆衛生学助教
 日浅陽一    日本肝臓学会理事/日本消化器病学会副理事長/
         愛媛大学大学院医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学教授
 米澤敦子    NPO法人「東京肝臓友の会」事務局長/日本肝臓病患者団体協議会代表幹事
〇協賛
 ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
(注2) MASLD(Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患):脂肪性肝疾患のうち心代謝系危険因子を1つ以上有する状態
MASH(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis、代謝機能障害関連脂肪肝炎):MASLDのうち脂肪肝炎を引き起こしている状態
(注3) Tateishi, Ryosuke, et al. "A nationwide survey on non-B, non-C hepatocellular carcinoma in Japan: 2011–2015 update." Journal of gastroenterology 54.4 (2019): 367-376.を基に日本総研推計
(注4) Schattenberg, Jörn M., et al. "Disease burden and economic impact of diagnosed non‐alcoholic steatohepatitis in five European countries in 2018: a cost‐of‐illness analysis." Liver International 41.6 (2021): 1227-1242.
(注5) 脂肪肝は、肝機能マーカー高値(ALT値30 U/L超:日本肝臓学会「奈良宣言2023」)の患者のうち、特に血小板数を含めた線維化マーカー高値の患者への対応が必要であり、血小板数を用いることでフォロー不要な層を見極めることができる。


■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】 広報部 山口 電話: 080-7154-5017
【一般のお客様】 リサーチ・コンサルティング部門 辻 電話: 080-7154-4814

■本レポートの帰属
 本レポートは、株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部⾨ヘルスケア・事業創造グループが、中長期的な観点から社会貢献をしたいとの考えから、公正・公平な視点を心がけた上で意見を取りまとめ、提示するものである。

 
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