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分散型電源はネットワーク化に向かう (1) 今、なぜ分散型電源のネットワーク化なのか

出典:分散型発電新聞 2004年7月5日

昨今、分散型電源の高付加価値な利用方法として、複数台の分散型電源をネットワーク化して統合制御を行うモデルの研究・実証が国内外で進められている。ネットワーク、分散型電源の種類や規模は様々であるが、国内でも3つのマイクログリッドのプロジェクトが立ち上がっているし、それ以外にも、特定地域で電力系統を利用して異なるサイトに設置されている分散型電源を統合制御する研究などが始まっている。このように分散型電源のネットワーク化が指向される背景には、次の3つの理由がある。

1つ目は、分散型電源の技術的進歩と普及である。これまでにも分散型電源は、特にコージェネレーション(電熱併給システム)として、総合エネルギー効率向上による経済的メリットや環境的メリットの観点から導入台数を増やしてきた。最近になって、マイクロガスタービンやマイクロガスエンジンなど小規模タイプの実用化が進んだことで、適用可能サイトは更に増加している。とうとう昨年度には、一般家庭にもガスエンジンコージェネレーションの販売が開始され、導入サイトは工場などの大口需要家から一般家庭という最小単位にまで達した。このように導入台数が増えたことで、分散型電源は一般化し、電源間の距離も短くなった。この結果、ネットワーク化が容易になり、熱需要に応じた分散型電源の稼動や電力融通により、総合エネルギー効率を更に向上させる取り組みが始まったのである。

2つ目は、自然エネルギー利用の拡大だ。化石燃料への依存度の低下、CO2排出量の削減などを目的として、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーによる電力利用の増大が期待されている。しかしながら、こうした自然エネルギーによる電力は、発電電力量が自然環境に左右されて大きく変動するため、電力品質(電圧、周波数)を一定に制御することが困難であり、電力系統があって始めて利用可能な電力である。この結果、自然エネルギーによる発電は、発電単価が高いにもかかわらず、売電収入が低く抑えられ、普及が進まない原因の一つとなってきた。自然エネルギーを普及させるためには、系統依存度を最大限に下げ、直接利用できる品質にすることで売電収入を確保する必要がある。そのために検討されているのが、ガスエンジンや燃料電池などの出力調整が可能な分散型電源とのネットワークを通じた連携だ。自然エネルギー系の電力の変動を出力調整が可能な分散型電源と統合して制御することで、ネットワーク全体として需給バランスを維持し、電力品質を一定レベルに向上させることが期待できるためだ。

3つ目は、エネルギーシステムの信頼性向上である。ニューヨークの大停電、昨年夏の東京電力の電力危機により、電力系統に過度に依存した電力供給システムのセキュリティ面に疑問符がついたことは否めない。今後は、分散型電源と電力系統とを共存させることにより電力供給手段を分散させて、エネルギーシステムをより強固にすることが求められる。しかしながら、現実には、分散型電源の大半が電力品質調整や負荷ピーク時のバックアップを電力系統に依存しているため、系統停電時には電力供給を継続できない。これに対し、分散型電源をネットワーク化し、ネットワーク単位で電力品質調整やバックアップを行えば、分散型電源によるエネルギーシステムのセキュリティ向上が期待できるというわけだ。

以上のように期待高まる分散型電源のネットワーク化であるが、その実用化に向けては多くの課題も残されている。中でも重要なのが、ビジネスモデルの構築だ。そもそもコージェネレーション単体でも、経済的メリットが得られる条件は限られていた。分散型電源をネットワーク化すれば、追加でネットワークや制御システムの負担が発生するのだから、経済的メリットは更に出づらくなる。実用化には、追加の負担とバランスするだけの顧客メリットを提示しなくてはならない。

本シリーズでは、分散型電源のネットワーク化に焦点を当て、事例の紹介やビジネスモデル上の課題の指摘を行うとともに、その可能性を探っていく。
(つづく)

 

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