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日本総研が企業連合結成 / 家庭用燃料電池ネットワーク化

出典:日経産業新聞 2003年6月8日

電力会社による大規模集中型電力供給に燃料電池で挑戦。
日本総合研究所は燃料電池を使った新しいビジネスモデルを探る企業連合形式の研究会「DESSコンソーシアム」を五日に立ち上げた。分散した複数の家庭用燃料電池をネットワーク化し、相互にバックアップする電力供給の可能性を探る狙いだ。
DESSは「Decentralized Energy System&Software(分散型エネルギーシステム&ソフト)」の略。水素と酸素の反応でエネルギーを取り出し、水しか排出しない燃料電池は環境に優しい。 排熱も利用すれば総合的なエネルギー利用効率は大規模集中型の発電を上回り、省エネ効果も期待できる。定置型燃料電池は都市ガスなどから水素を取り出して燃料として使い、家庭用コージェネレーション(熱電供給)システムとして普及が見込まれる。
ただ各家庭での燃料電池の利用パターンは異なる。そこで燃料電池を送電線を介して結び、さらに情報技術(IT)を使って発電状況を監視する。運用状況を見ながら余剰電力を相互に融通すれば、停電の心配もなく利用効率も高まる可能性がある。
「電力会社からの電力供給で燃料電池をバックアップするのではない。燃料電池が数多く分散すれば相互補完できる」と日本総研創発戦略センターの井熊均所長は話す。例えば大規模マンションの中で各部屋に分散した燃料電池をつなぎ”バーチャル(仮想)発電所”を構築するなどが考えられる。
「昼間にマンションの電力需要が少なければ、都心のオフィスに電力を販売することもできる」と日本総研の井上真壮副主任研究員は利点を指摘する。 分散型の電力供給にビジネスチャンスを見いだそうと、設立総会には約百六十人が集まった。
すでにガス、石油、住宅、ゼネコン、燃料電池メーカーなど三十社前後が研究会に参加する意向を示しているという。分散型発電が普及すれば困るはずの電力会社でも興味を示すところがある。研究会は二年後に会社設立を目指す。燃料電池をネットワーク化する技術だけでなく、ネットワークの運営ノウハウ、故障した場合のサポート体制などをソフトとして特許化。実際に分散型発電を運営したい企業に特許をライセンスする事業を検討中だ。
井上氏は「海外にも市場はある」と野心満々だ。参加企業は出願中の特許の一部を研究会で公開しなければならないなどの条件は付くが、設立総会には自治体も参加し分散型電力供給サービスへの関心度は高い。ある地域で自給自足型の電力供給体制を構築することも考えられる。燃料には廃木材など地域で集荷したバイオマス(生物資源)などが使える。
「地域活性化の一つのモデルにもなる」と同研究会の顧問に就任した柏木孝夫東京農工大大学院教授は語る。各社が開発競争を繰り広げる燃料電池だが、その応用にも知恵を絞る動きが活発になりそうだ。(上原正詩)    
 

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