中国 経済成長の罠 金融危機とバランスシート不況
- 著者
- 関辰一(調査部)
- 出版社名
- 日本経済新聞出版社
- 出版日
- 2018年5月24日
- 価格
- ¥2,200+税
中国の経済成長は持続的なものかどうかが注目されています。本書は、中国で日本のバブル崩壊が再現されるリスクが高まっていることを示そうとしたものです。経済成長に潜む2つのリスクシナリオを解説したうえで、中国における政府と市場の関係について論じ、リスク・コントロールのための方策を提示します。
一つ目のリスクシナリオは、金融危機が発生するという資金供給面のものです。もう一つはバランスシート不況に陥るという資金需要面のものです。リスクの所在は、巨額な不良債権と企業債務です。その形成された背景として、金融機関と企業が政府保証を前提に、極端にリスキーな経営判断を続けてきたことが指摘できます。状況を改善するためには、企業や金融機関が自立していかなければなりません。自己責任原則を浸透させ、国有企業に対する債務保証や補助金などの政府保証をやめるべきです。
目次
- バブル期の日本とよく似た中国
- バブル崩壊が起きる可能性は40%
- 問題先送りの構図
- 本書の構成
- 取り付け騒ぎが発生
- 公式統計は実態を表しているのか
- 隠される不良債権
- 潜在不良債権比率の先行研究
- 潜在不良債権比率は公式統計の5倍
- 高リスクの重工業
- 潜在不良債権比率の特徴と限界
- 不良債権規模は公式統計の10倍
- 危機発生のトリガーに
- 中国で最も危険な銀行
- 政府の対応にも不安材料
- 今後5年で景気失速の確率40%
- 銀行融資以外で資金を供給
- 史上最高を更新した短期金利
- デフォルトに直面する理財商品
- 様々にあるシャドーバンキングの定義と規模推計
- 銀行理財商品、委託融資、信託融資
- シャドーバンキングが拡大した3つの要因
- 非持続的スキームが抱える大きなリスク
- サブプライム・ローン問題と似た構図
- 大きな節目となる2018年
- 社会主義計画経済の理想と現実
- コントラストが鮮明な日本と中国
- 改革開放後に活気づく農村部
- 非国有経済が牽引する都市部の発展
- 急速に向上する生活水準
- 大きな所得格差が発生
- 過剰投資、過剰設備の問題
- 金融リスクの高まり
- 日本のバブル期を上回る企業債務
- 過剰な実物投資と金融資産投資
- 「脱実向虚」によるいびつなバランスシート
- 財テクに走ったバブル期の日本企業
- 不動産市場―バブルの様相を呈す
- 株式市場―株価下落で財務悪化の悪循環
- 委託融資の実態―企業間の危険なマネーゲーム
- ゴルフ会員権も投機対象に
- 重要な国有企業もマネーゲームに参加
- 企業の過度なリスクテイクの弊害
- バブルが起きる仕組み
- 日本のバブル崩壊はなぜ起きたか
- バランスシート不況のリスクに直面
- チャイナショックはなぜ起きたのか
- ミニクライシス: 2015年
- 低下する金利弾力性
- いつ景気失速しても不思議ではない
- 深刻なモラルハザードの発生
- 「剛性兌付」―元本が固く守られた社債
- 政府介入で企業の破綻を回避
- 市場の歪みによる低い資金調達コスト
- 不透明な政府補助金
- 続く国有企業への政府保証
- 財テクで企業債務が急拡大
- 金融機関の課題
- 政府の課題
- 重荷を担わされた習近平政権
- 過剰債務を解消する5つの方策
- 政府の危うい処方箋
- 金融システムの源流
- 建国初期の金融混乱
- 不徹底な金融制度改革
- バブル期の日本と似た中国の金融システム
- 国有企業の淵源にあるもの
- 経営請負制度の導入
- 株式会社化という改革
- 国有企業改革の不十分な実態
- 再び増え始めた国有企業
- 国有企業強大化による歪み