オピニオン
CSRを巡る動き:副業・兼業という新たな働き方
2016年11月01日 ESGリサーチセンター
2016年9月27日に総理大臣官邸で第1回「働き方改革実現会議」が開催されました。この会議のなかで、安倍総理は「テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方」を今後取りあげるテーマの1つとすることを言及しています。テレワーク等の普及に伴い、勤務場所や勤務時間を柔軟に選択して働くことが可能になれば、社外で様々な活動に参画することもできるようになります。
経済産業省「平成26年度 兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書」によれば、副業・兼業の容認企業はアンケート回答企業のわずか14.7%に過ぎません。さらに、総務省「平成24年就業構造基本調査」によれば、雇用者全体における副業をしている人の割合は、雇用者全体において3.4%に留まっています。副業をしている雇用者のうち、本業の収入が200万円未満である人は約半数、約7割の人が本業の収入が300万円未満となっています。このことからは、副業が生活収入の補填を目的に行われるものが多いことが窺えます。
では、副業・兼業の緩和という新たな働き方を推進していくことで、社会や企業にどのような効果があるのでしょうか。
1つ目は、中高年男性の活躍推進です。日本総合研究所が東京圏に勤務する40代~50代の男性管理職516人を対象に実施したアンケート調査によれば、定年まで現在の企業に勤める意欲のある男性管理職のうち、定年後も現在の企業に勤めたいと回答した男性管理職は約7割に上ることが明らかになっています。一方、多様な働き方に向けて、企業に求める制度を尋ねたところ、「業務量や働く時間を調整できる仕組み」(41.7%)が最も多く、続いて「副業・兼業規定の緩和・容認」(34.3%)が挙げられています。中高年男性のなかでも、副業・兼業への要望を持つ人が一定割合存在していることが窺えます。
企業の制度として副業や兼業が可能となれば、定年前から社外で多様な経験を積むことが可能となります。定年後は、再雇用等で同じ企業に就業継続を考えている中高年男性が多いなかで、このような制度を活用できれば、起業や転職など新たな活躍の場を見つけるきっかけになると考えられます。
2つ目は、企業価値向上への貢献です。経済産業省の上記調査によれば、副業・兼業を容認している企業には様々なメリットがあったことが報告されています。例えば、副業で得た知識を本業で活かしてもらえる、経営者感覚を養う人材育成につながる、定着率向上につながる、などです。副業・兼業を行う従業員側から見れば、新たなスキルや人材ネットワークの獲得、自己成長につながりますので、企業、従業員双方にとってメリットがある制度であるともいえます。
今後、副業・兼業という新たな働き方の実現によって、多くの企業や個人に良い変化をもたらし、新たなビジネスの創出につながっていくことが期待されます。