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再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に「魂」を込めよ

2011年09月21日 青山光彦


去る8月26日、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が成立した。この法律は国内への再生可能エネルギーの導入推進を目的として、再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、一定の期間・価格で電気事業者が買い取ることを義務付けるものである。買い取りに要した費用は、原則として使用電力に比例した賦課金(サーチャージ)によって回収することになり、具体的には電気料金の一部として国民負担となる。法案成立を受け、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が平成24年7月1日から開始することとなった。

経緯を振り返ると、法案自体は、東日本大震災が発生した3月11日に閣議決定が行われ、当時の菅首相の退陣の条件に掲げられながら、7月14日より衆議院、参議院で審議が進められた。特に衆議院での議論において、当初の政府原案から修正案が可決成立する過程においてその内容に重要な改善が見られた。
主な変更点として第一に、買い取り期間・買い取り価格の区分が変更されたことである。従来の政府原案では、再生可能エネルギー発電設備の区分ごとの設定(例えば太陽光発電以外は一律で10~15年で15~20円)だったものが、修正案では、再生可能エネルギー発電設備の区分、設置の形態および規模ごとの設定へと変更され、発電設備の特性にあった適切な買い取り期間・買い取り価格の設定が期待できるものへと改善された。
第二に、買い取り期間・買い取り価格の決定方法の変更である。政府原案では経済産業大臣および経済産業省の審議会(総合資源エネルギー調査会)のみが検討する権限を持っていたが、修正案では、再生可能エネルギー発電設備の所管に応じて他省庁の関係大臣と協議した上で、新しく設置される中立的な第三者委員会である「調達価格等算定委員会」(委員は国会の同意を得た上で任命)」の意見を尊重することとなった。
第三に、電力多消費業種への配慮条項が盛り込まれたことである。これは、電力使用原単位(売上高当りの電気使用量)が製造業平均の8倍を超える事業者を対象(鉄鋼・電炉業、鋳造業などを想定)として、事業所単位で賦課金(サーチャージ)を2割以下に減免するものである。

上記は、いずれも固定価格買い取り制度が効果的に機能するよう修正された事項であるが、一方で、一部の環境NPO等からも指摘されているように、再生可能エネルギーの系統接続の確約が得られるかという点で運用次第では骨抜きになる恐れが依然として残っている。第4条で、再生可能エネルギー発電事業者からの買い取り契約の申し込みに対して、電気事業者は「正当な理由」がある場合を除き買い取りを拒んではならないとしている一方で、第5条で「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき」や「正当な理由があるとき」には買い取りを拒むことが可能となっているのである。

再生可能エネルギー種ごとの買い取り価格や期間、賦課金(サーチャージ)の国民への実質の負担規模は、再生可能エネルギー事業者の利潤確保の程度、エネルギー対策特別会計・石油石炭税の充当などの検討を踏まえ、今後決定される予定であり、現時点ではまだ明確に示されてはいない。
再生可能エネルギー発電事業者による導入の後押しとなる制度として固定価格買い取り制度が機能し、効果的に再生可能エネルギーの導入が進むよう、魂の込もった制度を目指した十分な議論を今後も進めるべきである。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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