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妊産婦メンタルヘルスケアの現状と今後の展望

2026年09月01日 石塚渉、杉原絵美、見上日奈子、青木梓


1.妊産婦のメンタルヘルスに係る現状
 妊娠期から産後1年頃までは、身体的変化や出産への不安、睡眠不足、育児負担に加え、家族関係、就労、経済面の問題など、さまざまな負担が重なりやすく、メンタルヘルスの不調が生じやすい時期とされている。
 妊産婦の不調は、本人の日常生活だけでなく、育児にも影響を及ぼす可能性があり、妊産婦のメンタルヘルスケアは、母子保健、周産期医療、精神保健・医療、児童福祉等の関係機関が連携して取り組む必要がある横断的な課題である。
 また、これらの課題もふまえて、こども家庭庁が令和8年3月に改定・公表した「産前・産後サポート事業ガイドライン 産後ケア事業ガイドライン」(※1)では、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援や産前・産後サポート関係機関の連携、都道府県による広域支援などについて幅広く触れられており、自治体の重要な取り組みテーマの一つである。

2.自治体の取り組み
 自治体には、妊娠期から産後まで切れ目なく妊産婦を支えるとともに、妊産婦のメンタルヘルスの不調を早期に把握し、必要な保健・医療・福祉サービスへ確実につなぐ体制を整備することが求められている。
 市区町村では、こども家庭センター等を中核として、妊娠届け出時の面談、産婦健康診査、家庭訪問、産前・産後サポート、産後ケア、育児・家事支援など、多様な取り組みが進められている。特に、メンタルヘルスの不調を抱える妊産婦に対しては、保健師等による継続的な連絡や家庭訪問、医療機関への受診同行、育児支援サービスの導入、関係機関による合同ケース会議などを通じて、個々の状況に応じた支援が行われている。
 また、対面支援を補完する手段として、自治体独自のアプリ等のデジタルツールの活用も有効である。例えば、妊娠週数や産後の時期に応じた情報、健診や産後ケア等の案内を届けるほか、心身の状態に関するセルフチェック、各種支援サービスのオンライン申請等を可能にすることで利便性を高め、必要な支援への接続を促すことができる。
 あわせて、都道府県には、市区町村の区域を越えた関係機関のネットワーク構築、専門医療機関との連絡調整、支援者向け研修の実施、共通連絡票の作成、受け入れ可能な医療機関等に関する情報の整備・共有などを通じ、市区町村の取り組みを広域的・専門的に支える役割を担っていく必要がある。

3.今後の展望
 妊産婦のメンタルヘルスケアには、すべての妊産婦を対象とする予防的な取り組みと、個々の状況に応じた支援とを組み合わせた体制を整備していく必要がある。その際、妊娠期から産後1年頃まで継続的に心身や生活の状況を把握するとともに、自ら相談することが難しい妊産婦に対しても、本人の負担に配慮しながら関係をつないでいくことが重要である。
 メンタルヘルスの不調は、妊娠・出産・子育ての過程で誰にでも生じる可能性があるため、妊産婦が不調を抱えた際に相談でき、必要な支援へ円滑につながる仕組みを目指すことが求められる。その実現には、制度や支援資源の整備、デジタルツールの適切な活用に加え、関係者が役割と対応方針を共有し、地域の実情に応じた連携の実践を積み重ねていくことが必要である。

(※1) こども家庭庁「産前・産後サポート事業ガイドライン 産後ケア事業ガイドライン(令和8年3月)

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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