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発達障害・発達特性から考える「働く」を体験することの重要性

2026年08月25日 山内杏里彩


 皆さんは就職活動を開始した時、何に苦労したか覚えているだろうか。筆者は、修士1年生の夏に初めてのインターンシップに参加した。研究と両立しての選考やインターンシップへの参加には、時間の捻出や頭の切り替えなどに非常に苦戦した記憶がある。

 最近では、大学生3年生の6月までに約9割が就活を始めており(※1)、大学生活において学業と就活の両立が当然のように求められるようになっている。こうした就活の動きの中で、発達障害やその傾向のある学生には特有の苦労があるという。障害のある学生の学業や就活を支援する方々によれば、発達障害やその傾向のある学生が就活で苦労する要因は、「働くこと」のイメージが具体化されていないこと、そして学業と就活の両立の難しさにあるとのことである。

 発達障害の1つである自閉症スペクトラム症(ASD)の特性の1つに社会的文脈の理解の苦手さや字義通りの理解が挙げられる。つまり、まだ体験したことのない「働くこと」について、就活で提供される抽象的・一般的な情報からでは、自分にどんな職業や環境があっているのかを考えることが難しい人もいるのだ。また、エントリーシートや面接における相手の人となりを知るための抽象的な質問は、意図がわからず回答するのに時間がかかってしまうことや、字義通りに受け取り上手く回答できない場合もある。就労環境や職場での配慮の状況により働きやすさが大きく変わる発達障害やその傾向のある人にこそ、働くことを体験する場が非常に重要になってくるのだ。

 また、発達障害やその傾向のある学生は授業への出席や課題の提出など就学における困りごとを抱えているケースが多い。それに加えて就活も実施するとなるとかなり負荷が大きく、就活の開始時期が遅くなってしまいインターンシップに参加できない、場合によっては学業を優先するために就活は諦めるというケースもある。

 そこで、日本総合研究所が主催する「ニューロダイバーシティマネジメント研究会」では、発達障害やその傾向のある人を主な対象として、働くことを体験できる5日間のIT業務体験プログラムを実施した(※2)。参加者は、出社やリモートワークなどの形で、実際に各社のIT系の業務を体験してもらった。

 参加者は、5日間という期間を乗り越えられたことでリモートワーク等の制度を活用すればフルタイムで働くことができるかもしれないと働き方のイメージが具体化できた人や、自分の作った成果物について「実務でも通用するレベル」と評価をもらえたことで自信を持つことができた人など、様々な良い変化・新しい発見があった。企業で働くということへの理解を深めるだけでなく、自身の強みを活かして働くことができるという気づきにもつながった。

 また、参加者から話を聞く中で驚いたのは、学生側から企業へ「もっとこうしてほしい」という希望が多くあったことだ。発達障害の特性・能力は多様であるため今回のようなプログラムを通じて就労前に当事者と接する機会を増やしてほしい、障害者雇用か一般就労で迷っている学生にヒントを与えるような機会を増やしてほしい等の意見が多く聞かれた。プログラムを実施した企業にとっても、このように考えている学生が多いということを知ることができる貴重な機会になったことと思う。

 さて、IT業務体験プログラムは参加した学生・企業の双方にとって非常に有用な体験であったが、1つ大きな課題があった。それは、採用に直結していなかった点だ。学業と就活の両立に悩む学生が多いのであれば、貴重な5日間を採用に繋がるような時間として過ごしてもらえる方が良いだろう。実際に、大学の支援機関からも採用選考プロセスの一環であることが明示されている方が、本人の関心も高まるため期待の声が寄せられている。そこで、2026年度のニューロダイバーシティマネジメント研究会(※3)では、採用には直結しないIT業務体験プログラムから一歩先に進み、採用選考プロセスの一環としてインターンシッププログラム(※3)を実施する予定である。

 採用に際しては、企業として整えるべき制度的な課題も残されている。それでも、多くの学生は自分の障害を理解してもらい、自分の特性を活かして働くためのヒントを得る場を求めている。IT業務体験プログラムで得られた学びを活かしながら、新たな一歩を踏み出すための機会を今後も作り続けていきたい。

(※1) 【28卒学生のインターンシップ・就活に関する実態調査】就活開始の前倒しは進む一方、内々定獲得・就活終了希望時期は後ろ倒しの傾向に | パーソルキャリア株式会社のプレスリリース
(※2) 発達特性のある人に向けたIT業務体験プログラムの取り組みへの期待
(※3) ニューロダイバーシティマネジメント研究会


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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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