環境配慮は、いつから「選びたい価値」になるのだろうか。
筆者は長年、生活者の購買行動やブランド形成に携わってきた。一方で、環境テーマに本格的に向き合うようになったのは比較的最近である。
そうした二つの視点を重ねて見たとき、環境配慮もまたブランドと同じように、人が商品を選ぶ理由になり得ると思うようになった。その可能性を考える上で、最近のプライベートブランド(PB)の変化は非常に興味深い。
2026年6月、ドン・キホーテなどのリテール事業を展開するPPIHは低価格PB 「EDRP(Everyday Real Price)」
を発売した。ナフサ不足や資材高騰を背景に、白黒を基調としたシンプルなパッケージを採用し、徹底した低価格を実現している。一方、マツキヨココカラ&カンパニーは、環境配慮をテーマとしたPBの展開を進めている(※1)。低価格志向と環境志向、両者は一見すると異なるアプローチに見える。しかし共通しているのは、その背景にある価値観をブランドとして表現している点だ。
EDRPが表現しているのは「安さ」である。無駄を省き、生活者に還元するという考え方そのものをブランドとして打ち出している。かつてであれば簡素なパッケージは安っぽさの象徴だったかもしれない。しかし今は「余計なコストをかけていない」という合理性や誠実さとして受け取られ始めているのではないだろうか。EDRPは、コスト削減という企業努力をブランド価値として表現しているのである。
同じことは環境配慮型PBにも言える。こちらが表現しているのは「環境への配慮」という価値観である。素材や容器の工夫、資源利用への対応といった企業の取り組みを、第三者機関の活用や客観的な基準を取り入れながら商品に反映し、パッケージを通じて生活者に伝えようとしている。
両者に共通しているのは、企業の取り組みそのものを生活者が商品を選ぶ理由へと変えようとしている点である。PBはもはや安価なジェネリック商品ではない。企業の思想や価値観を、生活者に最も近い場所で伝えるメディアへと変化しつつある。
安さを伝えるために白黒パッケージがあるように、環境配慮を伝えるためにも、生活者が一目で価値を理解できる表現が必要になる。
その役割を担う代表的な仕組みがエコラベルである。
エコラベルは、環境配慮の基準を示す認証マークとして知られている。しかし、その役割は認証にとどまらない。環境省ではエコラベルを含めた「環境ラベル」を、製品やサービスの環境側面について、文言やシンボル、図形などを通じて購入者へ伝達するものとして定義している(※2)。つまり、エコラベルとは、環境配慮という見えにくい価値を、買い物の現場で伝えるためのコミュニケーションツールなのである。
普段の買い物では、価格や容量、味や機能は(シズル画像やコピーなどで)目に見える。しかし、その背景にある資源利用への配慮や持続可能性への取り組みは見えにくい。だからこそ、環境配慮を選択肢にするためには、その価値に気づくためのサインが必要になる。
ただし、そのサインを無条件に信頼すればよいわけではない。近年はグリーンウォッシングも課題として指摘されており、その意味や根拠を理解した上で選択する視点が必要である。
グリーン・マーケティング・ラボでは、6月1日から「エコラベルハンター 1.5℃大作戦」
を実施している。この取り組みは、買い物の中でエコラベル、CFPなどの環境ラベルを探し、知り、選ぶ体験を通じて、脱炭素を身近に考えるきっかけをつくる学習啓発コンテストである。この活動の本質は、単なる環境学習ではないと考えている。ラベルを探すことそのものではなく、その意味や根拠を理解し、自ら判断する力を育むことにある。
「エコラベルハンター」は家庭や売り場の中にある環境価値のサインを見つける体験である。環境配慮という見えにくい価値に気づき、その意味を知り、比較し、自ら選ぶ。その繰り返しによって、環境配慮は単なる知識ではなく、自分の価値観と結びついた選択肢へと変わっていく。
ブランドもまた同じである。私たちは機能や価格だけでなく、そのブランドが表現する価値観や世界観に共感し、選択している。環境配慮もまた、ブランド価値として支持される可能性を持っている。しかし、その価値が選ばれるためには、まず生活者に伝わり、理解される必要がある。環境ラベルは、そのための重要な接点になる。環境価値を可視化し、生活者の選択と結びつける役割を担うからだ。
安さが商品を選ぶ理由になるように、環境価値もまた商品を選ぶ理由になり得る。環境配慮商品が「環境に良いから買うもの」ではなく、「自分の価値観として選ぶもの」になる。その変化はすでに売り場の中から始まっているのではないだろうか。
(※1) 「eco friendly productt | matsukiyo 」

(※2) 環境省_環境ラベル等データベース_環境ラベルとは

本コラムは「創発 Mail Magazine」で配信したものです。メルマガの登録はこちらから 創発 Mail Magazine
※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

