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アフリカAI分野発展の将来

2026年05月19日 渡辺珠子


 アフリカは、今後50~60年間に渡って人口が増加し、消費市場としても様々な産業の生産地としても存在感が高まる重要な地域であるが、AI市場についても注目が集まっている。2025年8月に開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の「横浜宣言」では、アフリカでのデジタルトランスフォーメーション(DX)、人工知能(AI)の促進、農業システムの強化、人材育成など向けた協力等が言及された。国連はAI活用がSDGs目標達成に向けた取組みを加速させる要因のおよそ8割を占める(※1)と考えており、これからのアフリカの持続可能な成長においてもAIは欠かせないものとなっている。
 TICAD9開催期間中に民間企業を中心に締結されたMOUは、前回のTICAD8の92件から大幅に増加して324件と過去最多であったが、内AIおよびデジタルトランスフォーメーションに関するものが13件と、アフリカを新たな消費市場や協業・連携先と捉える動きが現れてきている。なかでも注目したいのはアフリカでのAI分野での人材育成に対する協力だ。具体的な支援策は、日本政府が東京大学と協力して3年間で3万人のAI人材を育成するというもので、現地の産業や雇用の創出を後押しするだけでなく、アフリカ企業やアフリカで事業展開する日本企業の人材獲得や、日本企業のAI関連事業のアフリカ市場展開の拡大などが期待されている。
 2024年に英国の通信業界団体GSMAが発表したレポート「AI for Africa」によれば、AIによってアフリカの経済成長はAIを使わない場合と比較して2030年までにおよそ2兆9,000億ドル拡大すると予測されている(※2)。アフリカのAI人材育成やAIを基盤とした製品・サービス開発にはGoogle、Meta、Microsoftなどグローバルのトップ企業もアフリカ各国で様々な投資をすでに行っていることもあり、日本としても今回の協力などを通じてこの経済拡大分を自国に取り込みたい考えだ。アフリカ側もAI人材育成やAIを活用したビジネス創出には期待を寄せている。国内でAI人材が育ち、AIを使える環境が整えば、諸外国から遠隔で業務が発注され、自国の失業率改善や所得向上が期待できるからだ。
 しかしいくつかの懸念点を解消することも必要だ。例えば、AIスキルを身に着けた人材を育成した結果、アフリカから他国に人材が流出する可能性もある。筆者が携わっているアフリカのスタートアップ育成のプロジェクトでも、参画している起業家やアクセラレーターは「他国からの発注に対して自国内で遠隔で仕事ができるようになったとしても、結局のところ自国のその他の社会・経済インフラが整備されなければ、自国に人材をとどめておくのが難しい」と話す。他にもアフリカがAIシステム開発の実験場や各国AI関連企業にとっての広大なデータ収集源となるものの、結局のところアフリカ以外の企業所有のシステムに依存し、アフリカ発イノベーションが「搾取される」のではないかという指摘もある。またAI導入における、平等、倫理、人権などに配慮した政策も必要性も挙げられている(※2)。これらはAIがアフリカ域内で新たな格差を生む可能性を指摘しており、アフリカにとって健全で持続的な発展とは結局どういうことなのかを改めて世界に問いかけている。「3年間で3万人のAI人材を育成する」という日本政府の支援も、東アフリカや北アフリカのスタートアップエコシステムからは「成果が出るのは数年先であり、既存のAI人材育成機関の動きを見ながら慎重に進めているのではないか」という状況である(※3)。アフリカがすでに消費市場や協業・連携先というビジネスパートナーとなった今、政府だけでなく今後アフリカに関わる企業全体もこの問いに対応していく必要がある。

(※1) United Nations “The UN Pulse ”Artificial Intelligence(AI)“を参照
(※2) GSMA“AI for Africa” (AI for Africa: Use cases delivering impact)より引用
(※3) 筆者のケニア、ウガンダ、エジプトのスタートアップおよびVCへのヒアリング結果(2026年4月末時点)より引用


本コラムは「創発 Mail Magazine」で配信したものです。メルマガの登録はこちらから 創発 Mail Magazine

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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