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【AI時代の人的資本経営】
【第1回】 AI時代の人事に起きている構造変化

2026年03月23日 村井傭平


1.はじめに
 生成AIの登場はビジネスの世界で多様な変革をもたらしつつあり、さまざまな領域でAI活用の方法が模索される中、人事領域にも大きな変革が起こりつつある。
 本連載では、人事領域×AIに焦点を絞り、AI活用により、今後人事業務がどのように変わっていくのかを展望する。
 第1回は、AIの得意領域・不得意領域について触れつつ、人的資本経営へのAI活用方針について述べる。

2.AIの得意・不得意領域とビジネスへの活用
 生成AIの急速な普及は、私たちに求められる能力や働き方に根本的な変化をもたらしつつある。ChatGPTやGeminiに代表される生成AIは、文章や画像の高速生成、翻訳・要約、広範な情報調査、アイデア出しの相手、単純作業やコーディングの効率化、さらには定型的なデータ解析まで、多様なタスクで人間の業務を支援する。
 一見するとAIは万能のように見えるが、生成AIには明らかな限界があることにも注意を向ける必要がある。例えば、AIは自発的な目的意識を持たず、倫理的判断や価値観に基づく意思決定も苦手である。また、未知の状況への柔軟な適応、少量データでの効率的学習、現実世界の直接的理解や物理的な相互作用、長期的な経験の蓄積といった領域でも人間には及ばない。このように、一見万能なAIにも弱点となる部分があり、特にどれだけ優秀に見えてもAIはあくまでもビジネスツールの一つに過ぎないという点に注意が必要である。



3.人事領域におけるAIとの向き合い方
 上述のようなAIの得意領域・不得意領域を踏まえた上で、人事領域ではAIとどのように向き合い、活用すべきだろうか。
 近年、人事領域でもAI活用は模索されているが、社内の人事制度に関する問い合わせ対応などでのチャットボットの利用や新卒採用におけるマッチング診断での活用など、「人事業務を効率化する」ための活用が主流となっている。
 その一方で、今後は、AI活用による人事業務のレベルアップについて展望を持つことが重要となる。

4.人的資本経営におけるAIの活用
 その一つが、「人的資本経営」への取り組み強化である。
 これまでは人事情報が散在していたため、統合的な管理や分析が難しく、そこから有用な示唆を得て人事施策に生かすことは困難だった。そのため、自社の人的資本の現状すら把握しきれず、何をどのようにすれば、人的資本を経営に有効活用できるのか判断することも容易ではなかった。
 一方で、情報の整理・調査・データ解析はAIが得意とする分野である。今後、AIの活用によって、人的資本情報を統合管理し、そこから意味を抽出することが現実的となり、より効果的な活用が期待できる。
 このような状況下で人事が果たすべき特に重要な役割は、AIが不得意とする「課題の設定」である。例えば、事業の方向性や経営戦略の変化に合わせ、「どのようなスキルや経験、価値観を持つ人材が、今後の組織に必要か?」という問いを立て、必要な人材像や組織構成を定義するような新たな人材ポートフォリオの設計や、事業推進を行う上であるべき組織文化とは何かを見極め、「どのような組織風土・価値観・行動特性が今後の競争力となるか?」という課題を設定するといった組織開発や風土改革のテーマ設定などが挙げられる。
 人事は経営に追従する存在から、経営と密接に連携し、あるべき人材・組織像を主導する役割へと進化する必要がある。人事は経営と現場をつなぐ「戦略的人材マネジメントのハブ」として、企業の持続的成長と人的資本の最大化に不可欠な存在となっていく必要がある。

5.最後に
 第2回以降は、採用や育成・評価などにおいて、AIにより人事機能はどのような進化を遂げるのかを解説しつつ、人事の新しい役割についても詳しく述べる。
 また、「AIと人的資本経営」に関心がある方は、拙共著『AI時代の人的資本経営』を手に取っていただきたい。本連載では触れなかった人的資本経営における人事の在り方や、AIの活用例などを紹介している。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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