オピニオン
若い世代の老後への不安とおひとりさまの未来
2026年02月25日 竜石堂未来
人生の中で、老後の生活や身じまいについていつごろからどの程度意識するだろうか。私は一人娘として育ち、幼いころから「自分は結婚しないと自分のお墓を見てくれる人がいない」「一人で死にたくない」と漠然と不安を抱いていた。家族がいれば安心、老後の不安を解消できると思っていた。同年代の友人と会話をしても、老後ひとりは寂しいから結婚したいという人や、結婚できないことに不安を感じる人は少なくない。
内閣府「国民生活に関する世論調査」では、日常生活での悩みや不安について、「老後の生活設計に不安を感じている」との回答が最も多く6割超で推移している。主に40代以上が多いが、30代の約5割、18歳~29歳でも約4割が老後の生活設計に不安を感じている(※1)。世代や性別を問わず、老後の不安は日本に広く浸透していている。
では、若い世代は老後と結婚の関係をどうみているか。独身の20~30代女性の15.9%が「老後が心配だから結婚したい」と回答している一方で、38.6%が「積極的に結婚しない理由」として「仕事・家事・育児・介護の負担」を挙げている。一方、「老後が心配だから結婚したい」男性は7.8%、「積極的に結婚しない理由」として「仕事・家事・育児・介護の負担」を挙げた男性は23.3%である(※2)。男性よりも女性の方が、老後と結婚や、結婚後の家庭生活の負担を結びつけて考えていることは興味深い。私だけでなく、同世代の女性たちも人生の選択において「老後」は無視できない。
「老後」のありようを決める家族の姿に関し、近年は2つの要因で身近に頼れる家族がいない高齢者が増えている。1つは、1970年代から進んだ核家族化に伴い、配偶者との死別後に一人暮らしとなる単身高齢者の増加である。もう1つは、2020年の50歳時未婚率(生涯未婚率)が男性28.3%、女性17.8%に達するなど、未婚率の上昇である(※3)。単身高齢者は令和2年時点で男性15.0%、女性22.1%だが、現在の41歳が65歳に達する令和32年(2050年)にはそれぞれ26.1%、29.3%に達すると見込まれている(※4)。現在の20~30代が結婚を選ばず、50代になっての未婚率がさらに上がれば、単身高齢者の割合も上がっていくだろう。
ここで、現在の20~30代の選択肢について再考したい。結婚やキャリア、ライフプランの選択肢の幅が広がり、多様な生き方ができるようになってきた一方で、現在の社会や制度には未婚や単身であることについて個人に「老後のリスク」を負わせたままになっている側面がある。例えば、転居時や入院・入所時の身元保証、医療・介護の意思決定における家族の同席や同意、死後手続きなどの場面で家族が求められることが多く、単身高齢者は高齢期の賃貸物件探しに難航したり、入院・入所を断られたりするなどの不利益を被りやすい。また、「家庭をもって初めて一人前」、「子どもがいないとわからないよね」など、周囲の無意識の偏見やマイクロアグレッションも、本人の心理的負担になっている。
さらに、老後に備えた資産形成や準備が不十分な場合、「困るとわかっていたのに備えなかった“自己責任”である」と片付けられてしまうことも多い。特に行政においては、頼れる身寄りのない人は例外的な支援困難事例と見なされ、自己責任論で議論されてしまいがちだ。しかし、そもそも今の日本社会では、老後に頼れる家族がいない人は少数派ではない。家族による支援を前提とした社会保障やサービス設計が限界を迎えているのである。
こうした「老後のリスク」を放置することは、若い世代の人生選択をも制約する可能性がある。これから必要なのは、頼れる家族がいないことを「例外」や「自己責任」として扱うのではなく、誰でも選び得る生活形態のひとつとみなすことである。家族の有無に関係なく、個人単位で社会保障や意思決定ができる枠組みや、老後に社会参加やつながりを持てる仕組みが充実すれば、「老後のリスク」への恐れが減り、20~30代が将来をより楽しみなものとみなせる可能性が増えると考える。
国際的な調査によれば、「老後を楽しみにしている」日本人は、ミレニアル世代で26%、Z世代の22%にとどまり、いずれも世界平均(41%)を大きく下回っている。世界平均では、若い世代ほど老後を楽しみにしている傾向があるが、日本は若い世代ほど期待しておらず対照的な結果が示されている(※5)。
おひとりさまを取り巻く現在の問題は、当事者だけのものではない。これから人生を選択する若い世代にどんなメッセージを伝えるかという問題でもある。私たちは今、どのような選択をしても、最期まで自分らしく人生を全うできる社会への転換点に立っているのではないだろうか。
(※1) 内閣府「国民生活に関する世論調査(令和7年8月調査)」表14

(※2) 内閣府「男女共同参画白書 令和4年度版」特-40図、特-41図

(※3) 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2025年版)」表6-23

(※4) 内閣府「令和7年版高齢社会白書」p11、図1-1-9

(※5) イプソス「高齢化に対する意識調査2025」(2025年9月3日公開、インターネット調査

本コラムは「創発 Mail Magazine」で配信したものです。メルマガの登録はこちらから 創発 Mail Magazine
※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

