・2024年時点でデジタル治療に該当する製品は140製品が上市しているとされており、活況を呈している。しかし、米国を中心に黎明期から活動する企業の倒産や吸収合併等、「失敗」ともいえる事例が出てきており、マネタイズの難しさを呈している。
・本レポートでは、デジタル治療・SaMDにおける成功を「投資に対して売上が上がっている企業・事例」「医薬品との相乗効果が上がっていることが認められる企業・事例」と定義し、事例の収集および分析、示唆の抽出を行った。
・「投資に対して売上が上がっている企業・事例」の全体的な傾向をつかむため、「企業としての総資金調達額」に対する「企業としての年間売上見込み額」の割合(「年間売上見込み額」/「総資金調達額」)を分析した結果、ドイツではがん領域よりも糖尿病・肥満症、精神・神経領域が高い数値となっている。一方、米国ではがん領域の数値が最も高い結果となった。国および疾患領域ごとに売上/投資の比率が異なる要因としては、保険制度、償還価格、研究開発費用などが挙げられる。
・米国およびドイツにおけるデジタル治療単体での成功要因を分析した結果、米国においては費用対効果の明示およびバーンレートを抑える研究開発戦略、ドイツにおいては各疾患領域で早期に製品を投入することが主要成功要因として抽出された。
・医薬品との相乗効果を生み出す事例においては、患者報告による症状のモニタリング・分析によって治療薬の副作用の早期発見・管理を行い、治療効果の向上と治療におけるリスクの低減を狙うデジタル治療製品の事例や、GLP-1受容体作動薬の効果増強を狙う製品の事例が確認された。どの企業においても総じて早期に製薬企業と連携の上、当該製薬企業の薬剤を用いた研究等を行う傾向にあった。
・米国および欧州の有識者へのヒアリングにおいては、「大前提として償還がなされ」「競争相手がおらず利用率が上がると想定される領域」を選ぶことが成功の重要要因として挙げられた。また、利用率向上のための仕組みと、焦点を絞った研究開発等の投資による支出の多寡が成功する企業と失敗する企業の違いとして挙げられた。さらに、デジタル治療・SaMDの将来については「各国の規制の明確化、AIなど技術的進展による市場の大幅な拡大」「薬剤との連携による治療効果の増強」「競争の激化により、SaMD開発企業の合併・統合が進む可能性」など、総じてポジティブな見立てが語られた。
・総じて、デジタル治療・SaMDで独立した事業としての成功には、米国では「利用率と単価を上げるソリューション構成」「経済的効果の提示」「開発パイプラインの絞り込み」、ドイツでは「アンメットメディカルニーズの探索」、日本においては「利用率を高めるための仕掛け」が特に重要であると考えられる。
・医薬品との相乗効果の成功を導く上では、早期に製薬企業とアライアンスを締結し、臨床試験等の建付けの設定により具体的な薬剤とのコンビネーションでの効果を確認することが重要であると考えられる。
・製薬企業とデジタル治療・SaMD開発企業が連携先に求めるものは、保険者にどの程度採用してもらえるか、また採用後にどの程度利用してもらえるかという観点で同根である。早期の連携と臨床試験の実施により、単体での治療効果や医薬品との相乗効果、特に米国の場合経済的効果を示した上で、マーケティングにて製薬企業とSaMD開発企業が一体的に活動し、プログラムの処方を促すことのできる体制を構築することが肝要と考えられる。
・米国においては、「処方せん医薬品使用関連ソフトウェア(PDURS)に関するガイドライン」の検討により製薬企業とデジタル治療・SaMD開発企業の連携が進むことが予見され、ドイツにおいては2024年3月に施行されたデジタル法(DigiG)によって糖尿病治療や遠隔医療モニタリングの分野などでのマーケットアクセスが広がることが見込まれる。日本においてもデジタル治療・SaMDについての制度整備は進んでいるが、医薬品とデジタルの連携や利用率向上の観点でさらなる制度や環境整備の余地があると考えられる。
※詳細につきましては、下記のレポートをご参照ください。
【調査レポート】

