ご存じの方も多くいらっしゃるかと思いますが、船の科学館は東京のお台場にある海事博物館です。1974年に開館し、2011年には客船の形をした本館の展示を休止し、現在では南極観測艦「宗谷」の展示(※1)が中心となり縮小して継続しています。
筆者が子供の頃、おそらく30年ほど前の話だと思います。日の出桟橋から水上バスでお台場に向かい船の科学館によく連れて行ってもらっていました。淡い記憶をたどると、館内には大きな船のエンジンや、様々な船種の船舶の模型、船のラジコンなどがあり、大きなプールも併設されており、さらに二式大艇も鎮座していたように、子供から大人まで楽しめる施設でした。船の科学館の思い出を振り返ると、小さい頃の体験あるいは無意識的な刷り込みが、少しずつ将来の進路に影響を与えていたのかもしれないと感じさせられるところがあります。
博物館の主要部分である本館は、老朽化等により2024年に解体工事が開始されました(※2)。リニューアルを目指して候補地の検討などを進めており、場所がどこになるかも含めて検討中とのことです(※3)。
第4期海洋基本計画をみてみると、「初等中等教育、高等教育の各段階において、海洋に関する教育を実施し、海洋科学技術に興味を持つ人の裾野を広げる」や「施設見学、キャリア教育・教科等横断的な学習の推進、(中略)を通じ、教育現場が主体的かつ継続的に取り組めるような環境整備を行う」、「海洋に関する国民の理解と関心を喚起するため、(中略)多様な取組を、産学官等で連携・協力の下、実施する」と書かれています。メタ的にみれば、海に関する場は一層求められていると感じます。
試しにChatGPTに「都内で海に関する博物館を挙げて」とたずねると、東京海洋大学や国立科学博物館、日本科学未来館、各水族館を回答してきました。個人的には、海洋に関連する各テーマをより統合的、包括的かつ大規模に展示、体験できる場があると嬉しいと思っています。できることなら、多くの人が訪れやすいところもしくは交通の便がよいところであれば、足も向きやすくなります。一方で、あえて“田舎”につくるという手もあるかもしれません、香川県直島にある地中美術館のように、地域内の一連の活動含めて成功しているといえるケースもあります。
いずれにしても、海に囲まれた日本に住む私たちにとって、海洋に関する事項を知ることは不可欠で、そのきっかけとなる“新たな場”が生まれることを願っています。
(※1) ウィキペディア「船の科学館」
 2025年10月4日参照
 2025年10月4日参照(※2) 東京都都市整備局長決定「東京都市計画公園十三号地公園整備方針」
 2025年10月4日参照
 2025年10月4日参照(※3) 日本経済新聞「船の科学館、老朽化で解体着手 南極観測船は展示継続」
 2025年10月4日参照
 2025年10月4日参照本コラムは「創発 Mail Magazine」で配信したものです。メルマガの登録はこちらから 創発 Mail Magazine
※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。


