NEDO水素・アンモニア成果報告会2025とは
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は、水素・アンモニア成果報告会を開催している。水素・アンモニア成果報告会は、水素・アンモニア分野におけるNEDOプロジェクトの実施状況と成果を公開・共有する場であり、技術や産業上の意義を広く伝え、普及促進を目的としている。
2025年の水素・アンモニア成果報告会は2025年7月15日(火)から17日(木)までパシフィコ横浜で開催された。会場では、口頭発表に多くの参加者が集まり、ポスターセッションでは発表者と参加者で活気のある議論が飛び交っていた。

コスト低減のカギは技術仕様の見直しにあり
成果報告会において、日本総合研究所(以下、日本総研)は昨年度NEDOから受託した「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業/総合調査研究/水素ステーションの自立化に向けたコスト低減状況に係る調査」について発表を行った。本調査事業では、水素ステーションにおける現状のコスト実態と2030年に向けたコスト低減の可能性を分析した。これら調査結果を通じて、水素ステーションの将来的な自立化に向けた問題提起や提言も行った。
【日本総研からの発表内容まとめ】
・コスト実態の調査結果としては2023年度における整備費は約4.1億円、運営費は年間4,000万円となっている。政府が2025年度目標としていた整備費2億円、運営費年間1,500万円と比べて、2倍以上も乖離がみられた。
・このコスト水準を大幅に引き下げるには、研究開発や規制の見直しだけでは不十分であり、水素ステーションにおける設計仕様の再検討が重要な役割を果たす。
・水素ステーション単体だけではなく燃料電池自動車(以下、FCV)も含めた両面からの検討が不可欠で、設備メーカーのみならず、運営事業者や自動車メーカー等を巻き込んで業界横断的な連携が求められる。

商用車向け水素ステーションにふさわしい仕様とは何か
口頭発表やポスターセッションを通じて、参加者からさまざまな質問や意見をいただき、現場ならではの視点から議論を深めることができた。特に注目が集まったのは、今後普及拡大が期待される商用車向け水素ステーションについてであった。
【口頭発表やポスターセッションにおける主な質問・意見】
・整備費および運営費が高くなっている中で、水素ステーションの採算性を向上させるには、どのような施策を講じる必要があるのか。
・商用車向け水素ステーションでは、どのような技術仕様が適しているのか。特に液体水素と圧縮水素のいずれが輸送・貯蔵面で適しているのか。
・技術仕様を定める際に、コストと利便性を考慮してスペックのバランスをいかに調整すべきか。
水素ステーションの採算性向上には、技術仕様の見直しに加えて水素販売差益の確保も重要となってくる。また、商用車向け水素ステーションにおける水素の貯蔵形態については、液体水素と圧縮水素それぞれに利点と課題があり、技術面・コスト面の両面から今後も検討を継続する必要がある。技術仕様を定める際には、上述の通り業界横断で連携してスペックのバランスを調整することが不可欠になってくる。
このような議論の中で、業界の注力領域が商用車にシフトしている状況を踏まえて、商用車向け水素ステーションを軸に今後取り組みを進めていくことへの期待が感じられた。

日本総研では、FCV・水素ステーションに関する取り組みとして、NEDOの調査事業以外にも、自治体や民間企業の支援を行っている。民間企業に対してはFCV・水素ステーション事業の戦略立案支援、関連サービスの立ち上げ支援等、幅広く支援を行ってきた実績がある。今後もFCV・水素ステーションの普及と自立化に貢献すべく、引き続き積極的に取り組んでいく所存である。
最後に
貴重な機会と充実した発表の場をご提供いただいたNEDOの皆様に、心より御礼申し上げます。成果報告会は、水素・アンモニア分野における最先端の研究成果や技術動向を共有する場として有意義な機会であり、関係各位のご尽力に深く敬意を表します。
【参考】NEDO水素・アンモニア成果報告会2025の発表資料
口頭発表資料

ポスター発表資料

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。