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【都議会議員選挙・参議院選挙2025】有権者アンケート―調査結果②有権者が求める政治家像―
2025年08月19日 杉原絵美
東京都議会議員選挙(2025年6月22日投開票)(以下「都議選」)、参議院議員通常選挙(2025年7月20日投開票)(以下「参院選」)と立て続けに選挙が実施された東京都の有権者3,000人を対象に、有権者の投票行動の実態把握を目的としてアンケート調査(以下「本調査」)を実施し、結果を取りまとめました。本調査に関する第1回目のコラムでは、近年影響力が大きくなってきているといわれているSNSを含め、有権者の投票行動に係る情報源の実態に関する調査結果について公表しました。第2回目の本コラムでは、有権者が求める政治家像に関する調査結果について示します。
本調査の調査結果②有権者が求める政治家像は、以下からご覧になれます。
「【都議会議員選挙・参議院選挙2025】有権者アンケート 調査結果②有権者が求める政治家像

■調査概要
調査期間: 2025年7月25日~2025年7月28日
調査方法: Webアンケート調査
調査対象: 東京都議会議員選挙(2025年6月22日投開票)、参議院議員通常選挙(2025年7月20日投開票)への選挙権を有した東京都に在住する18歳~79歳までの男女
回答数: 3,000人
■調査結果のサマリー
●「投票したい」と思う候補者の有無
あなたが「投票したい」と思う候補者がいたかとの設問について、「強く投票したいと思う候補者がいた」「ある程度投票したいと思う候補者がいた」と回答したのは、都議選(33.3%※)よりも、参院選(44.0%※)の方が多かった。一方で「あまり投票したいと思う候補者がいなかった」「全く投票したいと思う候補者がいなかった」と回答したのは、都議選(43.4%※)よりも、参院選(36.5%※)の方が少なかった。
年代別で見ると、60・70代においては「強く投票したいと思う候補者がいた」「ある程度投票したいと思う候補者がいた」と回答したのは約4割だが、50代以下では3割程度となった。
※「強く投票したいと思う候補者がいた」「ある程度投票したいと思う候補者がいた」または「あまり投票したいと思う候補者がいなかった」「全く投票したいと思う候補者がいなかった」の合算値


また、都議選または参院選で投票しなかった有権者を対象に、どのような環境や情報があれば投票したかについて尋ねたところ、「自分が投票したいと思う候補者や政党がいれば」という回答が最も多かった。(都議選:24.9%、参院選:24.0%)

●「もっと立候補してほしい」と感じる人のタイプ
「もっと立候補してほしい」と感じる人のタイプについては、全体では、「介護・保育・医療・福祉など、暮らしの現場で働いてきた当事者型の人」(20.1%)との回答が最も多かった(「特にこだわりはない/わからない」を除く)。次いで「企業での経営・管理職経験を持つ民間マネジメント型の人」 (15.3%) 、「学校の教員や子育て中の親など、教育・子育てを自分ごととして捉えることができる人」(13.6%)、「地域密着のNPOや市民団体を立ち上げ、社会課題に取り組んできた人」(13.4%)、「政治団体や政党に属さず、無所属で市民との対話を重視する人」(13.0%)との回答が多かった。
多くの回答があった選択肢の一部には男女差が見られた。なかでも「介護・保育・医療・福祉など、暮らしの現場で働いてきた当事者型の人」との回答は、女性で最も多く25.5%となったが、男性では14.8%となっており、男女の間で10ポイント以上の差がつく結果となった。この他、「学校の教員や子育て中の親など、教育・子育てを自分ごととして捉えることができる人」、「地域密着のNPOや市民団体を立ち上げ、社会課題に取り組んできた人」と回答した人は、男性よりも女性の方が多かった。一方で、「企業での経営・管理職経験を持つ民間マネジメント型の人」との回答は、男性で17.4%、女性で13.2%となっており、男性の方が多い結果となった。

●「投票したくなる候補者」が持つ資質・姿勢
「投票したくなる候補者」の資質・姿勢については、「誠実さ」(25.0%)、「政策実行力」(22.3%)、「行動力」(22.0%)、「責任感」(21.9%)との回答が多かった。
一方で、「情報発信力」(4.5%)、「合意形成力」(6.5%)、「傾聴力」(8.2%)との回答は少なかった。

■総括
2025年6月の都議選では、平成以降の都議選で最多の295名が立候補し、有権者の選択肢は増えたたはずですが、「あまり投票したいと思う候補者がいなかった」「全く投票したいと思う候補者がいなかった」との回答が、「強く投票したいと思う候補者がいた」「ある程度投票したいと思う候補者がいた」を上回る結果となりました。参院選の東京選挙区では7議席に32人が立候補しましたが、「あまり投票したいと思う候補者がいなかった」「全く投票したいと思う候補者がいなかった」との回答が4割弱を占める結果となりました。
この背景としては、候補者の多様性の不足、候補者ごとの政策の違いの見えづらさ、有権者側の政治への関心の低さ、候補者や政党に関する情報の見極めの難しさといったいくつかの要因が考えられます。本調査において投票しなかった有権者を対象に、どのような環境や情報があれば投票したかについて尋ねたところ、「自分が投票したいと思う候補者や政党がいれば」という回答が最も多かったことから、これまでの既存の政治家像に囚われない多様な政治家の輩出により、有権者側の投票意欲や政治への関心を高めるきっかけになる可能性は高いと考えられます。
有権者が求める政治家像としては、特に女性においては「介護・保育・医療・福祉など、暮らしの現場で働いてきた当事者型の人」や「地域密着のNPOや市民団体を立ち上げ、社会課題に取り組んできた人」との回答が多く、生活現場からの声が届く政治ニーズがあるということが見えてきました。また男性においては「企業での経営・管理職経験を持つ民間マネジメント型の人」との回答が多く、民間での経験を生かした実行型の政治ニーズがあると推測できます。この調査結果から、政界での経験やネットワークが豊富な職業政治家という形だけではなく、有権者によってより身近な生活実態や民間ビジネスの現場を知り、それを改善してくれる期待がもてる政治家像を有権者が求めていると考えられます。
「投票したくなる候補者」が持つ資質・姿勢については、「誠実さ」や「責任感」といった基盤となる人間力に加えて、「行動力」や「政策提言力」といった課題解決に向けた実行力が求められていることが見えてきました。
なお本調査結果については、Webアンケート調査となるためデジタルリテラシーが比較的高い層の回答が多い可能性があること、回答者の投票率が実際の投票率よりも高く政治意識の高い層が本調査には多く含まれる可能性があることについては留意する必要があります。
以上
※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
関連リンク
【都議会議員選挙・参議院選挙2025】有権者アンケート
・調査結果①有権者の投票行動の実態
・調査結果②有権者が求める政治家像