オピニオン
経営面での介護ロボットの導入効果の実態調査研究事業
2024年03月21日 石田遥太郎、大内亘、城岡秀彦、板花俊希、小林綾香
*本事業は、令和4年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。
1.事業の背景・目的
介護ロボットのさらなる普及・推進に向けては、導入コストや投資対効果等に関する懸念の解消が必要だと考えられる。そのため、本事業では介護ロボットの運用状況、導入プロセス(導入に至った経緯、投資判断の基準等)、導入効果(ケアの質の変化、業務負担の変化等)、経営面の影響(組織、人材、業務、財務)等について調査を実施した。
2.事業の概要
介護施設等(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護付きホーム)の経営者または施設長/事業所管理者に対して、アンケートを実施し、各介護ロボットの導入背景、運用状況、導入に至った経緯や、現場や経営面への影響などを調査した。また、アンケート調査結果を踏まえて、各分野別の介護ロボットを効果的に運用し、経営面に好影響をもたらしている事例を抽出し、導入の際の経営判断や導入効果等に関する深堀りのためのヒアリングを実施した。
3.事業の成果
本事業の成果物として、報告書に加えて、介護ロボットのさらなる普及促進を目的に、介護事業所・施設の経営層を主な対象とした「介護ロボット導入検討ポイント集」を作成した。
先進的な施設では、ビジョンの実現や職員の離職防止等の経営的な課題意識を起点に介護ロボットの導入を進めていることが各種調査を通じて明らかになった。また、介護ロボットを導入している大半の施設において、直接的な効果として業務の効率化はもちろんのこと、間接的・中長期的な効果として導入を通じた組織力の向上、職員の意識改革、職員の定着率の向上、利用者のQOL向上、ADLや要介護度の改善を実感(もしくは期待)していることが明らかになった。さらに、導入して終わりではなく、その後も継続的な改善活動を行っている施設ほど中長期的な視点での経営的な効果を得られていること等が明らかになった。
4.今後の課題
介護ロボットの導入においては、導入効果そのものに対する理解の不足に加えて、投資対効果の考え方が確立されていない点が課題である。また、活用時には、現場職員に機器の使用目的や活用意義が浸透していない、使いこなすための人材がいないといった推進体制上の課題に加えて、機器導入に伴うオペレーションの変更ができていない、導入後の効果検証等を通じたオペレーションの改善や見直しができていないといった課題がある。
また、そもそも、介護ロボット導入を検討すらしていない施設が一定数存在しており、介護ロボットのさらなる推進・普及のためには、これらの施設に対して、検討を進めていない/進められない理由やその課題などの実態把握が必要と考えられる。
※本調査研究事業の詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
【報告書本編】
【別冊資料「経営面での介護ロボットの導入効果の実態調査研究事業_ポイント集」】
【本件に関するお問い合わせ】
リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 石田遥太郎
E-mail: ishida.yotaro@jri.co.jp