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コラム「研究員のココロ」

使われる情報システムとするためのポイント
~業務改革とシステム構築を成功させるために~ (後編)

2004年10月18日 叶内朋則


 前回に引き続き、情報システムの設計・構築・導入をスムーズに行うための5つのポイントのうち後半3つを以下にご紹介する。


小さく生んで大きく育てる方針となっているか

 もうひとつ、ユーザーに評価され、よく使われる情報システムとするコツは、「小さく生んで大きく育てる」ことである。具体的には、


 ◆機能面:


目的実現のために必要な最低限の機能に絞り込んで開発。順次、既存機能を改良していくとともに機能を付加していく。


 ◆規模面:


モデル部署を選んで導入し、システムを改善しつつ全社へ展開していく。


 ◆業務面:


言葉や業務内容など違和感の無いレベルまで、変革の内容を絞り込む。業務やシステムへの習熟度が上がった段階で、業務内容を更に変えていく。



といった点に留意して導入を広めていくべきである。
 機能面に関して言えば、新たに情報システムを構築するとなると、あれもこれもと機能を付加しようとしがちである。その背景には現状システムに対する不満や要望をこの際だから挙げておこうという気持ちや、現状システムで出来ることはしてもらわなければ困るという考えがあるのだが、それはやめたほうが良い。このプロジェクトの目的は情報システムの改善ではないはずである。プロジェクトの目的達成のためにはシステム的には機能低下となったとしても構わないという覚悟が必要である。
 また、導入を小規模から段階的に進めていくことは、導入が容易であること以上に意見を吸い上げながらシステムの改修や業務の修正を行っていくという点においてメリットが大きい。
 業務面においても、導入の最初を如何にスムーズにするかに留意したほうが良い。はじめから高いレベルの業務を求めても、ユーザーがついて行けず拒否反応を示す場合が多い。できる所から少しずつ変革を進めていきレベルを高めていくことが肝要である。
 そして情報システムはこういった段階的な展開に対応可能であることが求められる。

 以下の二項目はシステム導入後の項目ではあるが、システム構築段階から考慮に入れておくべき項目である。是非チェックしていただきたい。


辛抱強く使い続けているか

 実際、業務の効率が上がり効果が発揮されるのは、経験と習熟によるところが大きい。それ故、新業務、新システムの導入直後は、以前と比べて効率が下がり、変革の効果も現れないことがある。そこを何とか乗り切り、業務の経験値と習熟度を上げていくことが必要となる。こと業務の変革においては朝令暮改では効果が発揮される前に止めることとなってしまい、逆効果である。一度始めた変革は信念を持ち、目的達成まで粘ることが必要だろう。
 また導入の効果が現れないのは、使われてないからということも多々ある。そのようなことがないように、前段の3つのポイントがあるわけだが、運用段階では使われた結果をフィードバックすることは重要である。業務の変革やシステムの利用により効果の現れた事例を広く知らしめることで、利用への動機付けとするのである。そしてそういった効果の現れた事例を拾い上げるためにも、変革に積極的な部署や変化への対応能力の高い部署に対し、先行的に導入し効果を見ていくのもひとつの方策である。


継続的に改善しているか

 改善は連続的であるが、改革・変革は不連続であり、不連続であるが故、最初の到達点では何がしかの不備があることは否めない。一度実行した変革は、それを是として継続するのでは無く、より良くより高度に進化させていく継続的な改善が必要である。それは、「小さく生んだ」変革を「大きく育てる」ことに他ならない。継続的改善により「大きく育てる」ことの見通しがあれば、「小さく生め」ば良いのである。
 業務改革にしろシステム構築にしろ、その目の前に迫った導入が最大の仕事であり、導入後のことまで気が回らないのが現実だろう。しかし、定期的な改善プロセスをあらかじめ定義しておくことで、継続的な改善はもとより、導入効果の事後チェックや投資対効果の算定も可能である。こうした改革のノウハウの蓄積は次の改革プロジェクトにとっての大きな資産となる。とかく改革プロジェクトは導入を果たしたら解散して終了となってしまいがちだが、前述のようなことを踏まえ、次につなぐことも考慮に入れてほしい。


 おさらいをすれば、使われる情報システムとするためのポイントとは、『目的を共有し、業務に組み込み、小さく生んで育て、辛抱強く使い続けて、継続的に改善していく』ことなのである。
 これら5つのポイントは、実は業務改革の成否を握るポイントにも通じている。考えてみれば当然のことである。何故なら業務と情報システムは表裏一体であり、一体でないとすれば改革プロジェクトの目的と合致していないことになるのだから。
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