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コラム「研究員のココロ」

飲食店・小売店の顧客満足度向上を目指して
~経営改革ワンポイントアドバイスシリーズ(No.2)~

2004年09月21日 佐藤邦明


 経営改革クラスタが携わったコンサルティング事例から、課題解決に効果が高かった手法を、ワンポイントアドバイスの形でご紹介しております。詳細については、クラスタに直接お問合せください。


1.来店客の減少は危険信号

 業界の指導的な立場にある老舗で、高い知名度があるにも拘わらず、今のままでいくと遠からず危機的な状況となる可能性がある企業が少なからずあります。特に、飲食店・小売業においては、昨今の消費不況の影響を大きく受けているところが多く客単価の下落と来店客の減少にあえいでおりますが、特に「来店客の減少」は早急に対策を打たないと取り返しのつかない事態になりかねません。
 来店客減少の要因としては、街や商店街自体が寂れてしまったという外的要因による場合もありますが、そうではなく企業側でその原因がよく把握できておらず、なんとなく不況のせいにしているうちにどんどん来店客が少なくなってきたという場合は、非常に危険です。通常でも、企業は年間15%ないし20%の割合で顧客を失っていると言われております。つまり、もし顧客の固定化努力を何もしないでいたら、3年で顧客は半分になってしまうということです。
 アメリカの著名なコンサルタントであるフレデリック・ライクヘルドはその研究の中で、企業はもっと顧客維持に関心を持ち、顧客離脱率は企業の業績に大きな影響を及ぼしていることを知らなければならないと警告しています。


2.「狩猟型マーケティング」から「牧畜型マーケティング」へ

 新しい顧客を獲得するのはたやすくありません。費用もかかります。これに対し既に取引のある顧客をつなぎとめるための費用は、経験的にその5分の1で済むと言われております。
上記の研究では、顧客離脱率を5%低減させることにより、収益を75%増大させた企業の事例が報告されており、低成長下でのマーケティングは従来の新規顧客開拓を中心とした「狩猟型マーケティング」ではなく、既存顧客の維持を中心とした牧畜型マーケティング」に移行していくものと思われます。いわゆる「固定客」作りをテーマとしたマーケティングです。


3.従業員の意識改革

 飲食店・小売業で顧客維持型マーケティングを行う上で特に重要なのは、従業員一人一人が経営者意識を持つことです。換言すると、お店の経営は、来店して下さる1人1人のお客様によって支えられているのだから、お客様には目いっぱいのサービスをして満足して帰っていただかなければならないという気持ちを従業員に持ってもらうことです。
今、来店して下さっているお客様のおかげで自分の生活が支えられていると思ったら、粗雑な扱いなどできるはずがありません。目いっぱいサービスをして気に入られ、是非また来店して欲しいと心から思うようになるはずです。そういうお客様に対する感謝の気持ちを持ち、お客様によって会社が支えられているのだという経営者意識を持つことが、顧客維持型マーケティングを実践するうえでは最も重要なのです。



4.顧客維持型マーケティングを実践するための手段

 さて、顧客維持型マーケティングを実践するうえで、従業員の意識改革とともに重要なことがあります。それは、顧客のニーズや不満を知ることとそれに対応するための接遇技術を向上させることです。

(1)顧客のニーズを知る-来店客アンケート調査-
 「顧客志向」という意識改革が顧客維持型マーケティングの基本戦略だとすれば、相手を知ってそれに対応する武器を持つことは、いわゆる「戦術」の部分です。企業が存続するためには「顧客に必要とされていること」が必要であり、そのためには顧客が何を考えているのかを知らなければ戦いようがありません。
 特に不特定多数の消費者と直接取引をすることによって事業が成り立っている飲食・小売業の場合、顧客ニーズを知ることは極めて重要な事項と言えます。絶えず顧客情報を集め、それに適切に対応する、その意味で「来店客アンケート調査」を定期的に行うことや、「お客様重役会」の開催などは非常に重要です。(なお、「来店客アンケート調査」を行う場合は、以下のことに留意しなければなりません。①自店に来店する顧客の多数意見が表れるようにサンプル数を十分確保すること、②平日と休日の来店客層が異なる場合は、別々に収集すること、③本気でアンケートを集めようと思ったら人手をかけて積極的にお願いすること)

(2)接遇技術の向上-接客研修とモニター調査-
 また、「戦術」のもうひとつの柱である接遇技術の向上には、いわゆる「接客研修」やそれをフォローするための「モニター調査」が有効となります。消費者を満足させ、購買を促している要因は何かと言うと、価格をよりどころにするならば業界トップの安さ」であり、ブランドをよりどころにするのであれば「高い品質と希少性」ですが、一般の飲食・小売店で固定客を増やすために有効な手段は何といっても「顧客を心から満足させる接客」なのです。
 商品そのものの差別化はもちろん図っていかなければなりませんが、来店客に心地よい空間を提供しまた来店したいと思わせるためには、やはり店の雰囲気とハイタッチな接客が必要だと思われます。その意味で接客研修を定期的に行っていくことは非常に重要です。(なお「接客研修」を実施する場合は、講義だけではなく、ロールプレイングを伴う研修が望ましいと思われます。普段何気なくやっているしぐさ、表情、行動、お客様との会話などを他人にみてもらい、自分では気付いていない改善すべき点を指摘してもらうことができるからです。)
 また、「モニター調査」は「接客研修」で身に着けた技術が有効に活用されているかどうかを他人の目で確認するための手段です。来店客アンケート調査と併用することにより、自店の接客水準が明確になると共に、対象となった従業員にはフィードバックを行うことにより接遇改善への動機付けとすることができます。(なお、モニターは従業員に顔を知られていない役員家族や友人等にお願いすると費用が少なくてすみます)
※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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