Sohatsu Eyes
下水道で新エネルギー
2005年07月12日 石田直美
下水処理に係るエネルギー消費は、日本のエネルギー消費の1%を占めるといわれています。下水処理には、汚水の運搬や処理場でのプロセスに多くのエネルギーをかけているためです。一方、下水処理に伴い発生する未利用エネルギーの有効活用に対する関心も高まっています。
最も有望なエネルギーは、消化ガスの有効利用です。下水処理場は、日本全国で約1600あり、このうち、約300の施設では、処理の過程に消化を取り入れています。消化とは、微生物を使って下水汚泥を嫌気醗酵させ、減容化するプロセスです。
消化工程ではメタンガスを主成分とする消化ガスが発生します。消化ガスは、都市ガスの約半分程度の熱量をもつ、立派な燃料ガスです。
消化ガスの有効利用としては、消化槽の加温用のボイラーでの利用が一般的ですが、最近では、これを発電に利用する取り組みが増えています。東京都、横浜市に続き、大阪市でも消化ガスを利用した発電事業をPFIで実施するべく、公募を開始したところです。
国土交通省の主導のもと、消化工程により発生する消化ガス量を増やす技術開発プロジェクトも進行中です。また、現在ではガスエンジンによる発電が一般的ですが、近い将来、燃料電池を用いた消化ガス発電が普及していくと期待されます。
このほかに、下水処理場から公共水域に排水する地点で小規模の水力発電を行う取り組みや、下水が持つ熱エネルギーをヒートポンプで取り出す等の取り組みも行われています。
京都議定書に定める第一約束期間が迫る中で、CO2削減の取り組みはまったなしです。電力消費の大きい下水道事業においては、より積極的な取り組みが求められます。処理場全体の省エネ化を計るESCOと組み合わせたり、民間企業の技術力等を活用するPFI方式を導入する等、CO2削減で先行する民間企業のノウハウを最大限活用できる事業方式も視野に、早急な取り組みを期待しています。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。