
ある工業団地に熱供給を行っている事業者を訪ねたことがあります。民生家庭向けの供給は料金設定が低く、全く利益が出ないのですが、地方政府の要請により、その事業者が周辺の住民に熱供給を始めたそうです。当然、今後地方政府がその事業者にいろいろ便宜を与えるのに間違いありません。ある都市の環境保護局は、家電リサイクル事業を育成させるために、地域を牽引するようなモデルとして、既存事業者の中の一社に特別な優遇策を与えています。環保局の働きにより、地方政府は、管轄地域内の政府機関の廃棄OA機器を全部無料でその事業者に引き渡すとの通達まで出しています。
環境・エネルギー分野は、元々地方行政と緊密に連携する性格があるのですが、市場経済へ転換する途上とも言える中国の環境・エネルギー事業は、地方政府との関係がなおさら重要です。国の政策・規制や、事業者の財務諸表に頼るばかりで、環境・エネルギー分野の事業を評価するのはあまり適切ではありません。事業の背景に地方政府がどう関わっているかを把握し、地方政府の関わりによるメリット、デメリットを見極めることが必要です。地方政府の優遇対象事業のチャンスをつかんで、市場を占有し、事業を拡大した成功事例は少なくありません。中国進出を検討する日本企業にとって、うまく地方政府と付き合うのは避けては通れない道なのかもしれません。
写真:閉鎖のため爆破させている小型火力発電所
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。