クローズアップテーマ 日本の温室効果ガス削減目標の検討が進行中 2009年01月23日 三木優 2009年は、京都議定書の第一約束期間(2008~2012年)に続く、2013年以降の温室効果ガス排出削減の枠組み(以下、「次期枠組み」とする)を決定する年となっている。2008年12月に開催されたCOP14/CMP4において、2009年末までの作業計画・会議日程が決定され、本格的な交渉モードに入った事が明確となっている。京都議定書のルール上、議定書を改定するためには半年前までに正式な改定案示さなければならないため、この作業計画では、6月の会議において、次期枠組みに関する正式な交渉ペーパーが提示される事になっている。 以上のような次期枠組みの作業計画との関係もあり、日本の温室効果ガス排出削減についての中期(2020年)目標の検討が2008年11月から始まっている。中期目標の議論は、首相官邸に設置された「地球温暖化問題に関する懇談会」の「中期目標検討委員会」にて行われており、11月以降、毎月1回のペースで開催されている。検討は、以下のスケジュールで進められる予定であり、現在は第二段階に入った段階と思われる。 ○ 第一段階(2回程度) ・ 中期目標を巡るこれまでの取組 ・ 各モデルの紹介 ・ マクロ諸元(GDP、人口等)のすり合わせ ○ 第二段階(3回程度) ・ 複数の選択肢を設定するための様々なケース(考え方)を委員が仮置きし、関係者からのヒアリングも行いつつ、モデルで分析 ・ 仮置きされたケースごとに、 ▲対応する削減量、コスト、必要となる技術、ピークアウト・長期目標との関係 ▲経済・社会への影響等をパッケージとして提示(=複数の選択肢) ・ 対策を取らない場合のコストも明示 ・ CDM、シンク、その他のガスの扱いの整理 ○ 第三段階(1~2回程度) ・ フリーディスカッション ・ 中間報告作成 ○ その後 ・ 地球温暖化問題に関する懇談会に報告。有識者ヒアリングや国民アンケート等を実施 ・ 必要に応じ、中期目標検討委員会での検討を継続 上記の委員会スケジュールと次期枠組みに関するスケジュールをふまえると3~4月には、中間報告が公表され、日本の中期目標が明らかにされると見込まれる。 1月23日の日経新聞によると国立環境研究所と地球環境産業技術研究機構の試算では、欧米と同程度のコストをかけた場合には、2020年の温室効果ガス排出量は、1990年比3%削減~7%増加になるとしており、これが日本の中期目標を検討する上でのたたき台の一つになる可能性がある。一方で、委員の中期目標に対するスタンス・コメントには京都議定書の-6%目標との整合性を考慮すべきとの意見やIPCCの25~40%削減とのバランスをとるべきとの指摘もあり、研究機関の試算に対して委員が削減量を「上積み」する可能性もある。日本の中期目標は、企業活動に大きな影響を与えることから、その議論のプロセスを含めて、注視していく必要がある。