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RIM 環太平洋ビジネス情報 2000年7月No.50

新総統就任で変わるか中台関係
中台の直接通航実現の日はいつか

2000年07月01日 さくら総合研究所 上席主任研究員 小林重雄


要約

国共内戦さなかの1948年に中台間の海運、空運の航路は途絶えた。以後中台は準戦時体制のもと、接触、交渉できないままできた。特に台湾は国防の観点から中国に対し、三不(接触せず、交渉せず、妥協せず)政策を採り、また国民(個人、法人とも)に中国との直接の三通(通商、通航、通信)を禁じてきている。しかし70年代末に中国は改革・開放政策を採って、台湾向けソフト路線に転じる一方で、台湾は80年代後半から工業化が開花して経済成長し、戒厳令撤廃、台湾住民の中国への渡航解禁がなされ、大量の台湾企業の中国への進出が始まった。

これにつれて台湾から中国への間接輸出も年毎に増加しており、中台の運輸業者、貿易業者からまず海運の直航実現を要望する声が高まってきている。通商は第三地経由で行われており、通信は電話機能の向上やインターネットの発達で事実上自由に行われており、通航のみ実現の目途が立っていない状況である。97 年、台湾と福建省の間に海運航路が通じたが多くの制限があり、疑似直航としか言えない状況である。三通実現を統一攻勢の一環としたい中国と実務問題として解決したい台湾との間にはイデオロギー、国家観の大きな隔たりがあり、中台国家元首の統一交渉に関わる呼びかけなどがあったが、呼びかけだけで終わり、具体的な進展はない。

しかし今年5月、台湾で三通実現を公約の一つに掲げていた陳水扁総統が就任し、また中台のWTO加盟が現実味を帯びてきたことから、中台の通商、通航解禁の日が近いのではないか、特に陳総統は台湾の海運業者から要望の強い海運直航実現にまず着手するのではないかという観測が強まっている。

中台間には国家観を巡り180度の違いがあると言っても過言でないため、国家観、イデオロギーを持ち出したら半永久的に交渉は開始されない。直航が実現するかどうかは、中台双方が100%の実務協議から入っていけるか否かという目敏さにある。

仮に陳総統が海運直航を開始すると宣言しても実現するのは2003年頃になる見込み。台湾側では関連法規の改正が必要であり、また中台双方の実務協議開始から妥結まで2年以上はかかると見られるからである。空運直航は海運直航よりもはるかに国防、安全保障問題に関連しているため、海運直航が実現して問題がないことが見届けられてから着手されると見られる。実現するのは海運直航実現から3~4年後の2006~2007年頃となるであろう。
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