RIM 環太平洋ビジネス情報 2004年10月Vol.4 No.15
中国の投資過熱の原因は何か
中央のコントロールを離れる地方
2004年10月01日 環太平洋研究センター 孟芳
- 2003年に、鉄鋼やセメント、電解アルミなど一部の業種において投資の伸び率が100%を上回り、投資過熱に伴う安定的な経済成長の持続に対する懸念が広がった。
- 現在の中国の経済成長は、投資の拡大に大きく依存している。資本形成率(資本形成/名目GDP)が上昇する傾向にあり、世界各国の平均値を大きく上回っている。特に、98年以降実施された国債発行による公共投資の拡大により、実質GDP成長率は各年1.5~2.0ポイント押し上げられた。
- 投資過熱の背景には、a.国内需要の増加、b.地方政府による投資の促進、c.98年以降の積極財政策と資金調達環境の改善、d.国家の経済成長目標の達成や産業高度化に向けた投資の促進、などがある。
- 投資過熱の進行に伴って、安定的な経済成長が損われる可能性が高まった。企業の在庫問題が顕在化しつつあるほか、インフレ圧力も高まってきた。さらに、電力や石油などのエネルギー需要の急増による資源不足の深刻化、新たな不良債権の発生などのリスクが存在する。
- これに対して、中央政府は一連の投資抑制策を実施した。2003年夏以降、不動産融資条件の厳格化に関する通達、商業銀行の預金準備率の引き上げ、窓口指導の強化などの金融引き締め策が導入された。また、2004年春以降、行政手段の強化による投資の抑制が図られるようになった。この結果、都市部の固定資産投資の伸び率は1~3月期の前年同期比47.8%増から4~6月期には24.3%増に低下するなど、投資は抑制されつつある。
- 中央政府が行政措置を強化した背景には、地方政府が投資を促進したことがある。これは地方分権化が推進された結果でもあるが、中央の産業政策が地方の投資意欲を高めたほか、土地使用権の認可に関する地方政府への「権限下放」、地方政府の予算外収入の増加なども関連している。
- 今後の課題としては、投資抑制策の実施によって、中国経済はソフトランディングするものと予想されるが、投資抑制策の行き過ぎにも十分注意する必要がある。また、中長期的には、中央と地方の間の権限配分問題を解決すること、土地供給に関する管理を強化することが課題として考えられる。