コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

RIM 環太平洋ビジネス情報 2005年10月号Vol.5 No.19

中国の不動産バブルの行方-中央と地方の確執

2005年10月01日 孟芳


要約

  1. 中国政府は2005年春以降、本格的な不動産投資の抑制に動き出した。中央政府は、住宅ローン金利の引き上げ、不動産売買に関連する課税措置の強化など、一連の政策を相次いで導入した。

  2. 不動産投資抑制が本格化した背景には、2003年以降、上海市を中心とした一部都市における不動産投資の急拡大や、不動産価格の急上昇などにより、不動産バブル発生の懸念が広がったことに加え、銀行の新規融資が不動産関連に集中したため、不良債権が増加する恐れがあること、などがある。

  3. 不動産市場の現状をみると、バブルとみられる条件が揃っている。具体的には、不動産投資の伸び率が長期間にわたって固定資産投資の伸び率を上回っていること、消費者の住宅購入価格の年収に対する倍率が国際水準を大きく上回っていること、多くの地域において、不動産売買価格の上昇率と賃貸価格の上昇率の乖離が大きいこと、不動産取引に占める投資目的の割合が高くなっていること、などがあげられる。

  4. 不動産バブルといわれる上海についてみると、2002年以降大きな不動産投資ブームが起こった。この結果、2003年以降不動産売買価格は全国第1位に上昇したほか、個人の可処分所得と不動産売買価格の倍率が中国国内で最も高い水準に達するとともに、銀行の新規貸出に占める不動産関連の割合が9割近くとなった。

  5. 中国における不動産バブル発生の背景としては、中央政府のマクロ政策の変化に伴って不動産投資を促進したこと、地方政府が業績目標の達成のために不動産投資を促進したこと、市場参加者(地方政府、不動産開発業者、金融機関、投資家など)が長期的かつ不動産投資利益の極大化を追求したこと、などが考えられる。

  6. 中央政府による不動産投資抑制策の実施を受け、地方政府も対応策を相次いで導入した。しかし、上海市などで不動産価格の伸び率に低下傾向がみられるものの、不動産開発投資の伸びは依然として高止まっている。中央政府と地方政府の利益相反により、中央政府の方針が地方に浸透するのは難しい状況にある。このことは、今後の不動産市場の行方を左右するものと予想される。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ