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RIM 環太平洋ビジネス情報 2006年05月号Vol.6 No.21

2012年までの中国の展望
-ソフトランディングに向けての挑戦-

2006年05月01日 調査部 主席研究員兼日綜(上海)投資コンサルティング有限公司 社長 呉軍華


要約

中国を取り巻く内外情勢の流れを分析すると、今後の中国を展望するに当たって、もっとも注目すべき年は2012年だと判断される。 対内的には、2012年まで胡錦濤時代が続くと予想され、このもとで、公平な社会の実現や自然・環境にやさしい経済成長への転換を目指す現行政策の基本が大きく変わる可能性は低いと見込まれるためである。一方、外部環境という側面からみても、2012年を大きな節目として捉えるべきだと主張したい。 2012年に21世紀における中国の進路に大きなインパクトを与えかねない三つの政権交代・選挙が予定されている。中国国内での指導部交替、台湾での総統選挙とアメリカでの大統領選挙の三つである。中国の指導部交替はともかくとして、他の二つの選挙、とりわけ台湾での総統選挙とその後の中国大陸・台湾の両岸関係の行方次第では、中国を取り巻く外部環境が劇的に変化する可能性が見込まれるが、それ以前はむしろ安定的に推移していくと思われる。 多くの問題を抱えながらも、共産党の一党支配による政治システムと統一国家としての枠組みが保持されている現状を「安定」と定義すれば、2012年までの中国社会は90%の確率で安定が維持される見通しである。一方、確率としては10%と低いが、混乱のシナリオも想定される。 もっとも、2012年までは「安定」という予測を出すことが出来ても、長期的にも中国の将来を楽観視しているわけではない。2012年を越えて、中国経済が持続的に成長し、社会もそれなりの安定を保っていくためには、2012年までの安定が「良い安定」でなければならないとみているからである。 具体的には、現指導部が2012年にかけて、中国社会の長期的安定を視野に入れて政策運営を行い、しかも、既得権益者層の抵抗を退けて、それなりの成果を上げることが出来るようであれば、長期的な安定のための基盤が築かれ、中国は21世紀において世界の超大国として再興する可能性が高まる。しかし、1990年代後半と同様に、現指導部があくまでも目の前の安泰しか目指さないような政策運営を続けていくようであれば、2012年までは安定を保つことが出来たとしても、その後は波乱の時代を迎える可能性があるといえよう。
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