Business & Economic Review 2011年7月号
【特集 グローバリゼーション下のわが国温暖化対策と環境ビジネス】
「ポスト京都」交渉の行方
2011年06月24日 名古屋大学大学院環境学研究科教授 高村ゆかり
1.はじめに
地球環境問題の中でも、地球温暖化問題は、生態系と人類の生存基盤である地球の気候系そのものを変化させてしまうとして、ここ20年ほどの間、国際政治の議題としても最も高い優先順位が与えられ、日本国内においても最も注目を集めてきた問題といってよい。
これまで、国際社会は、1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とそのもとで97年の京都会議(COP3)で採択された京都議定書を基礎に、地球温暖化問題への国際的枠組みを構築してきた。京都議定書は、2005年2月にその効力を発生し、2008年年頭からその削減の約束を実施する約束期間に入った。他方で、温暖化防止のための国際交渉においては、議定書の第一約束期間(2008年から2012年)の終了後、いかなる国際的枠組みのもとで問題に対処すべきかが最も重要な議題となっている。2009年12月のコペンハーゲン会議(COP15)での次期国際枠組みの合意をめざして交渉が進められてきたが、コペンハーゲン会議では期待された水準の合意はできなかった。しかし、その1年後、2010年12月のカンクン会議(COP16)では、「カンクン合意」の形で合意がなされた。京都議定書第一約束期間が終了する2012年末を前に、コペンハーゲン会議、そしてカンクン合意を経て今後の温暖化交渉の行方が注目される。
本稿では、まず、コペンハーゲン会議に至る次期枠組み交渉の到達点と次期枠組みが直面している課題を概観した後、最新のカンクン合意を踏まえた次期枠組み交渉の課題と展望について紹介する。