Business & Economic Review 2011年4月号
【特集 成長するアジアと金融】
中国人民元の国際化について-その背景、経緯と課題
2011年03月25日 吉林大学(中国) 経済学院 教授 李暁
- はじめに
2008年12月から中国の通貨当局は人民元の国際化を積極的に推進するようになった。この戦略の実行には政府主導の色彩が明確に表れており、初期の段階から国内外の学者から疑問視されてきたが、現時点で振り返ってみれば、政府の意図と実行手段が徐々に明らかになっているとともに、一方で一定の成果を挙げていることも否定できない。今日、人民元の国際化問題に対する周囲の関心は主に以下の二つの問題に集中している。第1に、人民元の国際化にはどのような将来ビジョンが描かれているのか。第2に、このような戦略が東アジア地域の通貨協力と国際通貨システムの改革にどのような影響をもたらすのか。これらの問題に完璧に解答するのは難しいと言わざるをえない。我々に今できることは、これまで2年以上の期間における人民元の国際化の進展とその成果について客観的に記述することであろう。中国の諺に、「三歳看老(3歳の子供を見れば、その人の老後の姿がわかる)」という言葉がある。人民元の国際化プロセスはまもなく3周年を迎えようとしているが、この間に観察されたその特徴や主な問題に対する分析を通じて、その諺のように、将来像を把握できるのではないかと思われる。
本稿はまず理論的研究の進展と現実的選択という二つの視点から中国通貨当局が人民元の国際化を進める戦略の背景を紹介する。次に、人民元の国際化プロセスは現時点では、いわゆる「周辺化」の段階に位置していることを指摘する。最後に、現時点での人民元国際化(周辺化)の進展状況を述べるとともに、直面する問題について分析する。