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Business & Economic Review 2007年02月号

【PERSPECTIVES】
新年世界経済の展望-世界景気は当面減速も、年央以降持ち直しへ

2007年01月25日 調査部 マクロ経済研究センター


要約

  1. 2006年の世界経済を回顧すると、年前半は全般的に力強い景気拡大が持続したが、年央以降は、アメリカにおいて住宅市場の調整が本格化した。しかしながら、アメリカでの景気減速は小幅にとどまっており、その他の地域にも顕著な悪化はみられておらず、総じて底堅い景気拡大が持続した。この背景には、a.アメリカの景気減速が、専ら住宅市場の調整のみにとどまり、住宅以外に大きな悪影響を及ぼしていない、b.各国経済のアメリカ依存度合いが薄れ、それぞれ自立性が強まる萌芽がみられている、c.原油価格の高騰が一服した、といった要因が挙げられる。こうしたファクターが持続性を有するかどうかが、2007年の世界経済の行方を左右することになる。

  2. 以上の現状認識を踏まえ、2007年の世界経済を展望するに当たり、カギになるとみられる下記三つのポイントについて検証した。

    (イ)アメリカ住宅市場の行方

    足許、住宅販売に下げ止まりの兆しが出始めている。長期金利低下、人口増を踏まえると、住宅販売は一段の下振れは見込み難くなっている。在庫率が依然高水準にあるなか、新規住宅投資・住宅価格には当面下押し圧力がかかり続けるが、住宅需要が下げ止まりつつあるなか、2007年央までにはこの分野での調整も一巡する見通しである。

    住宅市場の調整は、資産効果の減衰等を通じて個人消費の抑制に作用する可能性があるが、a.所得雇用環境の改善、b.株高、c.ガソリン価格下落という下支え要因が顕在化するなか、消費の大幅な減速は回避可能である。

    (ロ)世界経済のアメリカ依存からの脱却

    日欧のみならず中国をはじめとした新興市場国でも、足許内需が底堅さを増しつつある。新興市場国の景気拡大を受け、世界市場におけるアメリカのウエートは徐々に低下しているほか、生産や成長率においても、アメリカの影響度合いは徐々に低下し始めている。アメリカで大幅な景気減速とならない限り、その他地域は底堅さを維持するとみられる。

    (ハ)原油価格の行方

    2002年夏以降の原油価格上昇は、新興市場国での大幅な景気拡大を背景としているが、2004年央から2006年央にかけての原油価格は、世界的な金融緩和を受けた投機資金の流入により過度に押し上げられていた側面を否めず。2006年夏の原油価格急落は、金融緩和の是正により本来の需給に見合った水準に修正されたものといえ、今後一段の下落は期待薄。このため、原油安による追加的な景気刺激効果は期待できない。一方で、投機資金の再流入による高騰再燃も見込み難く、過度な景気抑制要因にもならない見込み。

  3. 以上の分析を踏まえたうえで、2007年の世界経済を展望すると、年央にかけてはやや減速するものの、年央以降は拡大基調に復帰する見通しである。

    (イ)アメリカ… 当面は、a.住宅市場の調整、b.それに伴う資産効果の減衰、などの要因を通じて家計部門を中心に景気減速傾向が続く見通し。もっとも、a.所得環境の緩やかな改善持続、b.原油価格の高騰一服、c.好調な企業収益を背景とする設備投資の拡大、等が下支えとなり、年率2%台の成長は維持される見込み。住宅市場の調整一巡が見込まれる年央以降は、潜在成長ペースでの成長に復帰する見通し。

    (ロ)欧州…ユーロ圏では、年初のドイツでの付加価値税増税、アメリカでの景気減速を受けた輸出の増勢鈍化を受け、年央にかけ景気減速色が強まる見通し。ただし、雇用環境の改善が続くなか緩やかな景気減速にとどまり、上記影響が一巡する年央以降は景気拡大基調に復帰する見通し。イギリスでは、景気拡大が続くものの、英中銀の金融引き締めを受け住宅価格の一段の上昇が期待薄ななか、個人消費を中心に力強さを欠いた状況が続く見通し。

    (ハ)アジア…中国では、固定資産投資の伸びがやや鈍化するとともに貿易黒字が縮小するものの、消費刺激策の効果が現れて個人消費が拡大し、成長率は+10.0%となる見通し。一方、中国を除く東アジア諸国では、年前半は景気減速が続くものの、年央以降は世界経済の持ち直しが期待されるなか、2006年を小幅下回るものの、+4~6%程度の安定した成長を維持する見通し。



  4. 上記のシナリオに対するリスク要因としては、a.住宅に関連しアメリカでの消費が下振れするリスク、b.世界的な保護主義圧力の強まり、それを受けた過度なドル安リスク、c.アメリカでの潜在成長率低下、それを受けたインフレ懸念等があり、これらに対する注意が必要である。
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