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Business & Economic Review 2008年09月号日本総合研究所 シンポジウム

【新しい国のかたち-連邦型地域主権国家の創造】
これからの自治体経営の在り方

2008年08月25日 総合研究部門 地域経営戦略グループ 主席研究員 持永哲志


要約

  1. わが国の地方財政は、全体として悪化傾向にあるとともに、個別にみても、地域経済が疲弊している限界集落や地方の衛星都市のみならず、地域を支える中核的な都市にも悪い状況のところが多くある。地方自治体の財政が悪化すると各種公共サービスが削減されることになるが、医療、福祉、教育分野のように、自治体は経済的弱者が大きく依存するサービスを行っていることから、自治体財政が破綻することは、高齢者、障害者、低所得者など経済的弱者がより大きな影響を受けることを意味する。さらに、住民サービスの低下は、転出余力のある者の転出をもたらし、人口減少、それによる地域経済の悪化、さらに税収減によるさらなる財政悪化という負のスパイラルに陥る可能性がある。

  2. さらに、今後、人口減少、少子高齢化、インフラ老朽化、グローバル化といったこれまでに経験したことのない大きな環境変化が招来し、いずれも、自治体経済や財政に深刻な影響を与える恐れがある。

  3. こうした状況を克服していくためには、従来の考え方の延長線上にとらわれず、自治体経営を大転換していくことが必要である。明治維新以来、わが国の地域経済、地方自治体を依存体質に陥れていた以下の三つの呪縛から脱却し、真に自立することが求められている。
    a.中央政府依存からの脱却(行政的自立)
    中央からの補助金などに依存せず、事務・事業も地域の事情を踏まえ、真に必要な事業に特化するとともに、民間活力を最大限に活用した効率的な地方行政を確立する。
    b.中央経済依存からの脱却(経済的自立)
    中央の本社に依存する支店経済や公共事業、福祉サービスなどの中央政府からの交付金などに依存する経済構造から転換し、地域資源を活用した自立した経済構造を確立する。
    c.行政依存からの脱却(住民自立)
    公的サービスを行政がすべて行うのではなく、住民、企業、NPOなど多様な主体が行政と役割分担をして公的サービスを担う地方自治体を確立する。

  4. 以上の自立を促すための制度的課題として、以下の3項目を提言する。
    a.地域主権の確立
    地方分権ではなく、すべての事務は原則として基礎的自治体が行い、問題がある場合にのみ、国に権限委譲するという発想に転換し、自治体コントロールの最大のツールである地方自治法、地方公務員法を抜本的に見直す。
    b.地方財政の自立
    中央集権的な税源配分を見直し、財政調整の主体を垂直調整から水平調整に移行するとともに、自治体財政の在り方の多様性を容認し、債券発行を自由化し、自治体破産制度を構築する。
    c.地方政治機能の活性化
    地方議会の定数、会期などを法律で一律に決めるのではなく、地域ごとに、住民に身近な議会、あるいは専門的能力の高い議会など地方議会の在り方を決定できるよう、地方議会の多様性を容認する。

  5. 戦後の経済社会体制は、戦前の国家総動員法に基づく体制を基本的に維持し、護送団行政、間接金融、強固な企業系列、中央集権的財政システムなどにより、戦後復興という名のもとに、有効に機能していった。しかしながら、バブル経済崩壊後、グローバル化が進展するなかでは、経済成長の障害となり、構造改革が行われ、金融政策などの経済政策転換が行われ、官と民の関係については、相当程度の改革が行われた。一方、中央と地方の関係には、戦時体制化と変化なく、依然として中央集権的であるが、わが国をめぐる環境が大きく変化し、国家財政のみならず地方財政も窮迫し、行政ニーズも多様化するなか、中央集権体制が機能しないことは自明の理であり、官と民の関係を大転換したように、中央と地方との関係を大転換し、真に自立した自治体を構築することが求められる。
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