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Business & Economic Review 1999年01月号

【論文】
新たな地方行政マネジメント-地方行革実現に向けて

1998年12月25日 村田 丈二


要約

1997年11月に自治省から「地方公共団体における行革推進のための指針」に関する新たな指針が示された。内容は、地方行革が遅々として進まない状況に憂慮し、地方自治体に積極的、効果的な取り組みを要請しているものと受け止められる。地方自治体の経営状態が総じて危機的状況に追い込まれていることが背景にある。

地方自治体の行革への取り組み方については、定員削減、事務事業評価システムの導入、組織・機構の見直し等において評価される事例もみられるが、自治体間ではかなりの格差がある。一方、自治体全体に共通する問題は、(1)行革に取り組む目的や実施計画内容の曖昧さ、(2)行革ニーズと取り組み内容との不一致、(3)行政評価を行う際の基準の甘さ、(4)評価自体の甘さ、(5)実施内容や実施効果の不透明さ、などの点である。

地方自治体のなかにはその経営状況が、民間企業であれば経営破綻に近いものがあるものの、補助金制度や起債の活用で表面的には経営が維持されているように錯覚される。そのため財政指標等に表れる経営悪化の実態に対する危機意識が庁内に欠落している。このような経営実態から判断すると、地方行政における公共性、業務の多様性等の特性を勘案したとしても、地方分権時代において地域(都市)経営の受け皿としての役割を担うには、まだ多くの問題点を抱えている。

地方自治体が自立的で健全な行政運営体制を確立していくためには、(1)「横並び主義」からの脱却を図り真に住民が求める行政サービスを提供する、(2)過去の慣行にとらわれずゼロベースで業務執行プロセスを見直す、(3)業務におけるコスト意識を醸成する、(4)トップ依存型経営から脱却し中堅層のマネジメント力の強化を図る、(5)行革に対する職員のインセンティブ形成を早急に進める、(6)変革への内部抵抗を排除する、などの経営課題を克服しなければならない。

そのためには、行政運営の実態をガラス張りにし、住民に対するアカウンタビリティの向上を図ることが大前提である。そのうえで従来とは異なるフレームワークを設定するなかで新たな行政マネジメントの確立が求められる。本稿ではその手法として、(1)ISO9000導入により行政運営における品質管理を強化する、(2)住民参加によるわかりやすい行政評価システムを構築し、行政の効率化や財政の健全化に活かす、(3)行政の守備範囲を再確認し、そのサービス水準を担保しつつより効果的なアウトソーシング・マネジメント体制を構築する、(4)ミドル層への大幅な権限委譲を進めて意思決定システムのフラット化を図る、(5)能力実績主義型人事システムの構築により職員の客観的人事評価の実践と能力開発の推進を図る、(6)行政評価管理システムを核に財務会計システム、人事管理システム等の庁内システムを相互にリンクさせ、合理的な管理システムの構築を図る、を提案する。
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