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Business & Economic Review 2001年08月号

【REPORT】
マネジメントのツールとしての行政評価

2001年07月25日 研究事業本部 副主任研究員 山中俊之


要約

近年、国や地方自治体の活動を客観的な指標で評価しようとする行政評価の必要性が高まっている。その背景には、
  1. 住民のニーズに合致した成果(アウトカム)を行政に対して求める傾向が強まったこと

  2. 財政赤字の拡大に伴い行政におけるコスト削減の必要性が高まったこと

  3. 行政の説明責任の必要性が高まったこと

  4. 行政運営のマネジメントの必要性が高まったこと

などがある。

現在、地方自治体で進んでいる行政評価は、政策、施策、事務事業に分けて評価する場合が一般的であり、この3種類の中ではまず事務事業評価に取り組んでいる地方自治体が多い。

都道府県をはじめ大規模な地方自治体を中心に取り組みが広がってきている行政評価の問題点としては、
  1. 行政評価の取り組みに向けての内部の体制や職員の意識の改革が不十分であること

  2. 政策評価、施策評価、事務事業評価のそれぞれの役割・目的や組織との関係が明確になっていないこと

  3. 行政には多様な側面があるため指標による評価が困難な場合があること

  4. 住民の参加・関与や住民への行政評価結果の公表が不十分であること

などが挙げられる。 そのため、行政評価が実際の行政の現場においてマネジメントのツールとして十分に活用できず、評価をすること自体が目的になってしまっている感がある。マネジメントのツールとして行政評価を活用することが望まれる。

行政評価をマネジメントのツールとして活用するには、

(1)まず行政評価を行政経営の中核と位置付け、首長の直轄の部署において行政評価の取り組みを進めることが必要である。このことにより、職員が行政評価へ取り組む意識・姿勢も変わる。

(2)政策、施策、事務事業評価のそれぞれの役割・目的を明確にすることによりマネジメントのツールとしての活用度が高まる。政策については、評価よりも事前の住民ニーズに関するマーケティングを重視して、その結果をできる限り政策の重要性の判断(ウェイト付け)に生かしていくことが肝要である。施策評価に関しては、できる限り組織の目標とリンクさせて、組織としての目標達成へのインセンティブを高めることが必要である。事務事業評価は、事業の効率性、必要性、有効性を測定する手段であるので、マネジメントのツールとして活用するには、事務事業評価の結果を職員の評価にリンクさせるなど、インセンティブ向上につなげていく方策を考案することが必要である。

(3)従来の政策、施策、事務事業評価とは別に、マネジメントの観点からの指標を作成することが重要である。例えば、組織のフラット化の度合いや決裁の簡素化、人事異動の希望がかなった職員の割合、住民への窓口業務の集約化度合いなどの指標が考えられる。また、従来は行政評価の対象とはならなかった管理部門を地方自治体の対内サービス部門と位置付けて、指標化することも重要である。

(4)行政において、真にマネジメントのツールとして活用するためには、行政評価の導入において住民の参加・関与を拡大することにより、行政評価の結果に、住民の「お墨付き」を与えることが必要である。
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