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Business & Economic Review 2001年04月号

【REPORT】
消費性向の動きと個人消費の行方

2001年03月25日 調査部 経済研究センター 益田郁夫


要約

消費性向の動きをみると、SNA (国民経済計算)と家計調査のいずれにおいても、99年度以降は上昇しており、個人消費の低迷は基本的に所得要因によるものと考えられる。なお、消費性向の長期トレンドは、SNAベースでは上昇基調にあるのに対し、家計調査ベースでは低下基調にある。この違いは、高齢化による影響がSNAベースの消費性向の上昇にフルに反映するのに対し、勤労者世帯のみが対象となる家計調査ベースでは、高齢化の影響が限定的にしか生じないことが要因であると推測される。

家計調査ベースの消費性向は、80年代以降、全ての世帯主年齢層で低下傾向にある。住宅ローンの返済負担など契約的支出(過去に行った契約に基づく支出)の動きと、消費性向の動きを照らし合わせてみると、世帯主が40歳代と50歳代の家計では、契約的支出が増加した分、消費性向が低下しており、契約的支出の増加が消費性向の低下要因となっている可能性が高い。

世帯主が30歳代の家計では、契約的支出が増加する以上に消費性向が低下している。30歳代は、住宅取得や子供の教育費などの支出増が見込まれる時期を控え、家計が貯蓄に励む時期であり、実際に、消費性向は他の年齢層よりも低い。この年齢層で消費性向の低下が続いている要因として、契約的支出の増加以外に、バブル期前後の地価水準の高い時期に持ち家取得が進まなかった結果、未取得世帯のなかで取得意欲を持つ世帯、つまり貯蓄意欲の高い世帯の比率が高まった可能性が指摘できる。

住宅ローン返済額の比率は、地価の下落などを背景に新規取得者のローン返済負担が引き続き低下していることから、今後低下していく可能性が高い。保険掛け金支払いの比率は既に頭打ちとなっており、可処分所得に対する契約的支出の比率は、今後、次第に低下していくと考えられる。また、若年層での持ち家保有率が前の世代の水準に追いつきつつあるなかで、住宅取得意欲のある世帯の比率は低下に転じており、また、住宅取得時に必要となる頭金の水準も低下してきた。こうしたことから、これまで家計調査ベースの消費性向の低下につながった要因は薄れ、上昇トレンドに転じる可能性もある。

景気対策としての持ち家取得促進策は、短期的には住宅投資を盛り上げるものの、ローンの返済負担の増加を通じて消費支出を抑制するものとみられる。こうしたマイナス面を緩和するためには、持ち家取得にともなう土地のコストを削減するために創設された定期借地権制度や、自宅を保有している高齢者の消費活動を活性化するため導入が模索されているリバースモーゲイジなどの活用促進策が求められよう。
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