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Business & Economic Review 2006年08月号

【PERSPECTIVES】
2006~2007年度改訂見通し-「資本効率重視型成長パターン」の形成と持続的成長への課題

2006年07月25日 調査部 マクロ経済研究センター


要約

  1. わが国経済は2002年入り以降息の長い景気回復局面にあり、回復の足取りに底堅さ。もっとも、「いざなぎ超え」を間近に控え、a.世界的な金融市場の不安定化、b.原油高・資源価格高による企業収益圧迫、c.株価の軟調・下落の逆資産効果など、ここにきて幾つかの懸念材料が台頭。

  2. 2002年1月を「谷」とし、2004年後半以降に回復傾向が明確化してきた今次景気回復局面は、a.労働分配率の大幅な低下、b.消費の持続的回復、c.収益体質の持続的改善といった点でバブル崩壊以降にあった2回の景気回復局面と異なる特徴を有する。この背景には、「資本効率重視型成長パターン」とも呼ぶべき、新しい成長パターンが形成されつつあることを指摘できる。
    a.内部留保・配当を優先し、人件費への分配を抑制する方向に、付加価値分配のパターンが変化。背景には「資本効率」の引き上げに向けて、人件費コストを抑制し、負債・資産を両建てで圧縮して利益率を引き上げることを追求するという企業行動の変化。

    b.資本効率重視に向けた企業行動パターンの変化は、消費回復の新たなルートを創造。資本効率重視の企業行動の結果として、株価上昇による資産効果や配当所得の増加が消費回復をサポート。

  3. 景気の先行きを展望すると、基本的には、【輸出増/設備投資増】→【生産・収益増】→【雇用・賃金増】→【個人消費増】→【生産・収益増】の好循環が作動するもとで、回復トレンドが持続。

    もっとも、以下の諸点が当面の景気回復ペースを抑制。
    a.アメリカ景気が来春ごろにかけ緩やかに減速していくと予想されるもとで、年率2ケタが続く輸出のハイペースな伸びが次第に鈍化

    b.労働分配率の低位安定が図られるもとで、雇用者数が回復傾向を強めていくとしても、賃金が調整されるため、マクロでみた雇用者報酬の増勢は引き続き緩やか

    c.リスクマネーが世界的に収縮する方向にあるもとで、株価の低迷が続くなか、株価上昇の個人消費刺激効果は2006年後半を中心に減衰

    d.金利・資源価格の下げ止まり/上昇傾向が企業収益を圧迫
    結局、2006年度の景気は「いざなぎ超え」を実現しつつ、年度全体で2%超の成長率を確保するものの、「踊り場」脱却後の急回復モードから、持続的な成長軌道へ収束していくなかで成長ペースに減速感。

  4. 2007年度入り後は、a.アメリカ景気復調のプラス影響に加え、b.団塊世代の大量定年が、退職一時金増加による消費押し上げ・人件費軽減を通じた企業収益押し上げ、の両ルートで徐々にプラス作用を広げていく公算。このもとで、成長ペースは下期に向け再加速、年度全体の成長率も2%台半ばを確保へ。

  5. 消費者物価は、需給バランスの改善を背景にプラス基調が定着。ただし、a.輸入増に煽られる形での激しい市場競争、b.緩やかな賃金の回復力、c.資源価格の上昇ペース鈍化、などを勘案すれば、プラス幅の拡大テンポは穏やかなものに。

  6. このように、2006~07年度のわが国経済は、景気回復の持続が予想されるものの、幾つかのリスクファクター。とりわけ、アメリカ経済の変調を起点とする金融マーケットの混乱の悪影響が懸念されるものの、米・中間の相互補完関係を軸としたグローバルな「景気拡大/物価・金利安定」の構図が基本的に維持されるとの前提に立てば、景気腰折れの公算は小。むしろ、その先の2007年度後半以降を展望すれば、世界的な低金利基調が維持され世界経済の拡大が持続するなか、非効率的な投資が行われ、将来的に過剰資本ストックにつながる“設備投資バブル”が発生する可能性に留意する必要。

  7. 「資本効率重視型」の企業行動への規律付けを行うと同時に、外的ショックへの政策的対応力の早期回復に向けて、a.政策金利正常化、および、b.歳出効率化を主軸とした財政健全化、を両立させる
    必要。限られた期間内に、これを実現するには以下のような政策手順が適切。
    a.第1ステップ:思い切った歳出削減の筋道の提示(2006~2007年度)

    b.第2ステップ:政策金利の正常化(2008年度中が目処)

    c.第3ステップ:消費税率2%ポイント引き上げ(2009年度以降)
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