Business & Economic Review 2003年06月号
【REPORT】
関西における外資導入の現状と課題-外資による関西経済活性化を
2003年05月25日 調査部 関西経済研究センター 小沢康英
要約
- 関西経済の地盤低下が続くなか、関西では自治体や経済団体などが、関西経済活性化に向けた取り組みとして、外部の資本やノウハウを活用するために外資の導入を積極化させている。 外資の導入は、企業家精神の刺激や市場の透明性向上など、経済のグローバル化に対応した経済・社会システムの構築に寄与するとともに、とくに関西では、地域経済の新たな活力として期待されている。
- しかし、外資系企業の立地件数を地域別にみると、首都圏が中心で、関西は全体の約8%にすぎない。関西の域内純生産額の全国シェア約17%に対し、その比率はかなり低い。 関西で外資の立地が劣勢なことの背景には、a.アジアで生産拠点整備の動きが強まるなか、関西では、外資系企業に占める製造業の比率が相対的に高いことから、生産拠点の再配置の影響が大きいこと、b.経済の首都圏への一極集中が進み、関西では都市機能が低下してきたために、関西への非製造業外資の進出が鈍かったこと、c.外資導入には地域が主体となった活動が重要であるが、資金面からの画一的な支援策が多いために、強いインセンティブになりえず、誘致の成果に十分つながっていないこと、があげられる。
- 全国のなかには、活発な誘致活動によって、特定分野における外資系企業の集積が進んでいる地域も出てきており、今後、外資系企業の地域別分布が変わる兆しがみられる。各国あるいは国内各地域との厳しい競合のなか、関西に外資系企業を誘致していくための方策として、以下4点が指摘出来る。 第1に、特定分野に重点を置いた製造業外資の誘致である。バイオやナノテクの分野など先端的な技術やノウハウを有した製造業外資の進出が進むよう、資金面からの支援とともに、技術面からの支援として、関西で整備が進む研究機関を積極的に活用していくべきである。 第2に、都市再生を契機とした非製造業外資の誘致である。近年首都圏に進出した外資は関西に拠点を有する割合が相対的に低い。都市基盤の再整備のなかで、再開発施設に入居するテナントを中心に、首都圏に所在する外資の営業拠点を誘致することが重要である。 第3に、M&Aの拡大である。当社が実施した関西の外資系企業向けアンケート調査の結果によると、新たな展開を図る際の形態として「既存企業との合併・買収」を考えている企業の割合が約2割を占める。経済団体など民間の誘致組織を中心に、M&A関連の情報収集機能の強化が要請される。 第4に、多様な分野における国際交流の活発化である。外資が進出地域を選定する際、パートナー企業の存在や経営者層の人脈・土地勘なども重要な要素となる。外資が関西に進出する契機となるよう、市町村が主体となった地域産業間での交流など、より広い範囲での国際交流の活発化が望まれる。