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Business & Economic Review 2005年06月号

【REPORT】
シンガポールの金融セクター改革

2005年05月25日 調査部 環太平洋戦略研究センター 副主任研究員 萩原素子


要約
  1. 近年、中国などの急成長を背景に欧米金融機関がアジアへの進出を再開しているなか、シンガポールがアジアのプライベート・バンキング・センターとして注目されている。その背景には、1997年以降、政府が中心となって金融セクター改革を進めてきたことがある。金融セクター改革の主な目的は、a.地場銀行の競争力強化、b.資本市場の整備、およびこれらをてことした、c.資産運用業の育成である。近年のプライベート・バンキング市場の拡大は一連の改革の成果と言えよう。

  2. まず、金融セクター改革の第1の目標である地場銀行の競争力強化についてみると、銀行を規制によって保護するのを止め、グローバルな競争に耐えられるよう主導していく方針へと政策の転換が行われた。具体的には、a.金融監督方法を、金融機関に一律に規制を課す形から多様なリスクに柔軟に対応するスキームに変更し、金融機関経営に自由度を与え、b.外資の国内業務への参入を許すことにより競争原理の導入が図られた。

  3. 次に、資本市場の整備については、まず、国債市場の整備から着手し、次いで「Sドルの非国際化政策」の緩和や、税制優遇措置を講じることによって外国金融機関をプレーヤーとして活用する、等の方策を通じて社債市場の整備が進められた。一方、デリバティブ市場では上場商品の多様化によって、また株式市場については上場商品の多様化に加えて海外取引所との提携によって、利便性の向上が図られた。
    *Sドル=シンガポールドル

  4. こうした地場銀行の競争力強化と資本市場の整備による金融セクター改革をベースに、資産運用業の育成が図られた。そのための具体的措置として、a.市場規模拡大を目的とした政府資金の民間ファンド・マネージャーへの委託や、b.資産運用業者の多様化に向けた、外国の運用会社の誘致、国内ブティック型ファンド・マネージャーの育成、ヘッジファンドの受け入れ、などの政策が実施された。

  5. シンガポールは、現在も、中国・インドの成長とそれに伴うアジア全体の発展という中長期的環境変化を、国際金融センターとして発展するチャンスと明確に位置付けたうえで、資産運用業や資本市場の発展を後押しする政策を積極的に展開している。こうしたシンガポールの取り組みは、国内金融市場の成長を目指すわが国にとっても示唆に富むと言えよう。
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