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Business & Economic Review 2007年07月号

【REPORT】
日本版SBIR制度の改善に向けた四つの提言-中小企業発のイノベーションを促進するために

2007年06月25日 研究事業本部 産業政策・技術戦略クラスター 研究員 木下理英


要約

アメリカにおいて、1982年に導入された中小企業の研究開発に対する助成金制度「SBIRプログラム」は成功しており、日本ではこれを見習って、同様の制度「日本版SBIR制度」を1999年に導入した。しかし、これまでのところ、日本ではあまり成功していない。

(株)日本総合研究所は2007年2月に、アメリカSBIRプログラムの成功要因について現地調査を実施した。その結果、日本において通説となっている、「アメリカのSBIRプログラムが成功しているのは、政府調達に密接に結び付いているからであり、その背景には優先的政府調達の法規制がある」との認識は、誤解であることが判明した。むしろそのような法規制を設けることは、イノベーションを阻害することになりかねない。

日米のプログラムの最大の相違は、以下の四つであり、これらこそがアメリカのプログラムの成功要因となっている。

第1は、アメリカのSBIRプログラムは、フィージビリティ・スタディ、研究開発、事業化という三つのフェーズから成り立っているのに対して、日本の制度では、フェーズ制はとられておらず、補助金の対象の多くが研究開発活動の後期に集中していること。

第2は、アメリカSBIRプログラムは、フェーズ制などの共通のスキームがあるなかで、細部の運営が各省庁に任されているのに対し、日本版SBIR制度では、共通のスキームが存在しないこと。

第3は、アメリカのSBIR助成金は民間のベンチャー・キャピタルと相互補完的に資金を供給しているのに対し、日本の補助金はそうした機能的な分担ができていないこと。

第4は、アメリカのSBIR参加省庁は、いずれも事業化に強い関心を持ち、事業化推進のための独自の仕組みを開発してきているが、日本では、事業化に対する関心が低いこと。

これらの四つの違いを踏まえて、今後の日本版SBIR制度の改変を行っていく必要がある。
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