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コラム「研究員のココロ」

リーダーシップが育つ土壌づくりを!!

2009年07月17日 大井大輔


1.リーダーシップが育たない

 中小・中堅企業の経営者から、「なかなかリーダーシップが育たない」、「指示待ち人間が多い」といった悩みをよく耳にする。会議の場で管理職に、「もっとリーダーシップを身につけろ」といった怒号を飛ばしている経営者もいらっしゃる。しかしリーダーシップとは誰かからいわれて身につくものなのだろうか。いや、違う。リーダーシップといったものは自発的に発揮するものであって、第三者からいわれて身につくものではないだろう。
 一般的にリーダーシップとは、「集団的努力を喚起して集団の目的を効果的に達成していくために集団成員に対して行使する影響力」と定義されている。分かりやすくいえば、経営理念もしくは経営ビジョンといった、企業が掲げた目標に向けて社員を導く力である。したがって管理職がリーダーシップを発揮できるかどうかは、自社の経営理念や経営ビジョンに共感できるかどうか、もっといえば、経営者に共感できるかどうか、を意味する。つまり組織にリーダーシップが育っていないのは、経営者が共感できる明確な経営理念を提示できていないか、もしくは経営者に共感していないことを示唆している。
 とはいえ、経営理念とは普遍的なものであるために、一般的にはどの企業の経営理念も似通っており、共感できる経営理念を提示するのはなかなか難しい。中小・中堅企業にかかわらず、大企業においても、誰もが共感できる経営理念を掲げている企業はそう多くはない。リーダーシップを組織に醸成させるためには、共感できる経営理念を構築し、共感できる経営者になることだが、ここでは別の視点としてリーダーシップを組織に醸成させていく仕組みづくりについて述べていく。


2.リーダーシップが育つ土壌づくり

 冒頭にも述べた通り、リーダーシップは第三者から指導されて身につくものではなく、自らの気付きを経て身につけるものである。これが、語学、会計やITといった一般的なスキルを身につけるのと本質的に異なる点だ。では気付きを与える仕組みをいかにして構築するかであるが、気付きをもっとも効果的に与えることができるのは、危機感や反省といった自己を省みる感情である。例えば、従来、企業全体で損益管理をしており、事業毎では売上管理しかしていない企業があったとしよう。この企業の事業部長は、売上管理はしているために、売上に対する意識は強いが、利益に対する意識が薄いことは容易に想像される。全体の利益が低下しても事業別の損益が把握できないために、各事業部長は自事業部では収益を上げていると主張し、責任を他事業部に擦り付けようとするだろう。これを各事業部の損益まで管理できるようにすると、赤字の事業部が明確になり、その事業部長は、目の色を変えて事業改革に取り組むだろう。このように損益を管理する仕組みを整備することで、事業部長に「気付き」を与えることができる。
 また目標(予算方針)管理制度には、自ら目標(計画)を立て、目標に対する結果を評価する一連の流れから気付きを与えることのできる仕組みがある。これは自己点検という概念であるが、目標を考える過程、目標と結果とのギャップを把握する過程において、どのように改善していけば良いのかを自ら省み、目標に向けて組織を動かしていくことが期待できる。
 このように事業別損益管理、目標管理制度といった一般的な経営マネジメントの仕組みを導入することで、リーダーシップは醸成されていくことになるが、単に制度を導入すれば、リーダーシップが醸成されるわけではない。以下に、リーダーシップを醸成するための制度設計のポイントを上げておく。

1)「気付き(自己を省みる機会)」が起こるループを整備する

 損益管理、目標管理といったマネジメント制度は、基本的には目標と結果のギャップを認識させ、そのギャップを解決させていくものである。だが多くの企業において、目標(計画)は立てたが、結果とのギャップは分析していない、ギャップは把握しているがその解決策の検討はなおざりになっているケースが散見される。その場合は「気付き」は発生しない。PDCAサイクルにおいて、一般的に「P:計画」や「D:実行」に重点が置かれがちだが、気付きを与えるという視点からは「C:チェック」と「A:改善」が最も重要である。

2)自分だけでは解決できないテーマを目標にする

 他者の協力が必要なくとも達成できるテーマを目標として設定する場合、他者とのかかわりがないために、リーダーシップを発揮するような状況が生じない。したがって事業計画を立案するとしても、他者(部下、他部門)とのかかわりが発生するような大きなテーマに取り組む必要がある。特に中小企業における目標管理の場合、部長が一人で汗をかけば達成できるような目標を設定していることが多い。

3)経営者と共感できる「場」を創出しておく

 共感できる経営理念を構築することは難しいが、経営者の考えを共有し、共感できる場を設けることは比較的容易である。管理職といえども、経営者の考えを共有できていないことが意外に多い。まず経営者の考えを共有する場を設け、経営者に共感できるきっかけを与えることで、管理職は経営者の考えに基づいて行動し始めるのである。


3.リーダーシップからオーナーシップへ

 これまでリーダーシップについて話を進めてきたが、リーダーシップと似た言葉にオーナーシップという言葉がある。オーナーシップは、リーダーシップに比べて、「当事者意識(すべての責任)」を持つという点からより経営者に近い意識を意味する。リーダーシップは、評価を受ける中で「気付き」を与えられ、自発的に行動を促すことにより発揮されるものとしたが、オーナーシップは他者からの評価を受けることなく、真に自発的に行動することである。経営者は、孤独な存在だといわれるが、基本的には誰からも評価されることはない。それでも経営者は自らの意志によって、経営活動を推進するために、部下を導いていくのである。
 管理職にオーナーシップを持たせるには、一度、その部門(担当部分)を完全に任せてみることである。もちろんリーダーシップを有していることが前提条件となるが。特にオーナー企業の場合、管理職といえども経営者にはなれないという思いから、担当者と同じレベルの問題意識しか持っていないことも少なくない。その際には、まず社内でリーダーシップが育つような仕組みを整備し運用し、管理職にリーダーシップが醸成されたところを見計らって、責任と権限を管理職に委譲することが重要である。オーナーとしては、権限を委譲することに抵抗感を持つかもしれないが、権限を委譲しないと、自身に代わる人材はいつまで経っても育たないのである。社員にリーダーシップが欠けていると感じている経営者の方々には、まずリーダーシップが育つ土壌づくりから取り組まれることをお勧めしたい。
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