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古くて新しい環境と経済の問題

2009年09月04日 青山光彦


 このところ、民主党政権の成立による市民生活や企業への影響に関する記事が紙面をにぎわしているが、あえて少し視点を変え、古くて新しい問題である「環境と経済の両立」について目を引く記事があったのでとりあげたい。

 9月3日付の日経エコロミーの記事によれば、世界自然遺産である屋久島が登山客の増加により環境負荷が高まっており、屋久島町エコツーリズム推進協議会において、対策の一つとして入山規制も視野に入れた検討を行う、とのことである。

 屋久島は、ご承知のとおり、映画「もののけ姫」の舞台となったその原自然のすばらしさや、樹齢が数千年という「縄文杉」などで有名であり、1993年の世界自然遺産登録以降、観光客の増加もあり、観光業が地元の人々の生活を支える重要な位置づけとなっている。
 また筆者も参加したのだが、2003年には、エネルギー問題、エコツーリズム、水循環などをテーマとした、環境政策に取り組む自治体職員及び関係者のネットワーク会議である「第11回環境自治体会議・屋久島会議」も当地で開催されており、屋久島は以前から「環境問題」には何かと関わりのある地域であるといえる。

 現在、環境保全の必要性と観光業という経済の両立という難しい問題にまさに直面しているわけだが、環境負荷の増大という問題の根幹は、トイレのし尿処理が追いつかず水質悪化を招いたり、トイレ以外の場所で用を足し、ごみが散乱していることのようである。
 こうした問題の対策は、一般論として「規制的な取り組み」と「誘導的な取り組み」の2パターンに分類されることが多い。前者については、まさに入山規制がその代表例だろう。後者については、環境負荷が増大しないように観光客を誘導するような何かしらのインセンティブを設定することが重要である。これが、記事にあるように「縄文杉に集中する観光客をダイビングやウミガメの観察に移す」ための方策の具体的な中身の1つとなりえるだろう。
 屋久島の地域住民の方は、これまでにも様々な類似課題に直面し検討を重ねたり、また閉鎖系である特徴を活かして学識者とともに様々な実証実験に協力をしていただいていると聞く。今後求められるのは、協議会を中心として規制的・誘導的な様々な制度設計を進めていただくことに加えて、島外部から来る観光客が規範をもち、良識ある行動に期待することが十分に大きいのではないか。環境と経済の問題解決には、実はソーシャル・キャピタルの醸成とも非常に相関が強いのでは、という思いを、今回の記事を読んで改めて強めた。
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