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生物多様性地域戦略で考えたこと

2009年08月19日 


 現在、環境省において、生物多様性地域戦略策定に向けた、手引書の作成が進められており、同手引き(案)に対するパブリックコメントが募集されている。
 これは平成20年6月に施行された生物多様性基本法において、都道府県及び市町村が、「生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画(生物多様性地域戦略)を定めるよう努めなければならない」と定めていることから、具体的な地域戦略策定の本格化に向けた前段として位置づけられるものである。
 既に地域戦略が策定完了もしくは策定中の先導的な都道府県も一部に見られ、手引きの完成を受けて、今後地方自治体での地域戦略の策定が進んでいくことになる。
 当コラムの「自治体の温暖化対策は第2フェーズへ」等でこれまでご紹介して来た通り、「適応」策への取り組みの必要性も高まっている一方、これまでの「緩和」策に対する動きもさらに加速していることが実感出来るが、この動きの中で重要ではないかと頭に浮かんだ点をいくつか整理しておきたい。

1.生物多様性の重要性を分かりやすく伝えるツールの構築
 まず、まだ親しみの少ない「生物多様性」という概念とその重要性を分かりやすく伝えるストーリーを創っていくことが望まれる。種の多様性が損なわれつつあるとか、外来種が脅威となる等については、既に事実としてある程度受け止められているとは思われるが、それによって地域にどのような社会的・経済的影響が生じるのかを、地域ごとの特性を踏まえて具体的に示すことが、生物多様性の重要性の理解につながるのではないかと思われる。
 この点については、今後の地域戦略の策定と平行して、具体的な成功例が出てくることを強く望んでいる。

2.自治体政策全般との連携を図ること
 そして生物多様性地域戦略を単に地球環境政策の一部としてとどめるのではなく、自治体が取り組む政策全般との一体化を図ることである。手引き(案)においては、「庁内関係部局との調整」という項目で比較的手短に触れられているが、環境基本計画をはじめ地球環境分野の各種計画において、その他の自治体政策との連携については、まだまだ充実すべき余地があると考えている。
 したがって事務レベルでの調整に加えて、行政トップや議会関係者、あるいは市民の意識を高めていく仕掛けについても、工夫が必要になるのではないだろうか。

3.あらゆる面での「多様性」への意識の展開
 また本題とは少し離れるが、多様性という考え方が、生物界だけではなく地域や企業といった「人間の世界」においても認知されていくことを、個人的には期待している。
 優れた組織が有する要件の一つとして、ポジティブな意味で国際的にはしばしば使用される”diversity”(多様性)という言葉は、日本では意識されることがまだまだ少ない。地域社会や企業の中における性別、国籍や年齢等の面での構成員の多様化は現代では不可避であり、その多様化によって地域や組織が活性化している事例も多いことから、多様性を認める考え方を我が国の中で広く浸透させる仕掛けも、生物多様性戦略の動きとは別に必要であると感じている。
 そして、「社会全体の多様性」が認知されることが、やや親しみづらい「生物多様性」という考え方の理解にもつながるという相乗効果が実現すれば、この上ないことである。
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