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Sohatsu Eyes

低炭素型交通システムの国際展開

2009年09月08日 安納剛志


今年7月のラクイラサミットでは、2050年までに先進国全体で二酸化炭素排出量を1990年対比80%削減という目標が合意された。民主党政権のマニフェストでも、2020年までに1990年比25%削減するという高い目標を掲げられている。低炭素社会実現に向けた国際的合意は揺るぎないものとなり、各国で実現に向けた政策が実行されつつある。

中でも削減ポテンシャルが民生他部門と比較して大きい運輸部門での削減は、目標達成の必須条件となっている。しかし、輸送手段の転換なしに技術開発だけで削減目標を達成することはできない。例えば弊社の試算によると、日本では目標の達成のために運輸部門で1/10にさせる必要があるが、電気自動車への代替だけでは目標を達成することは困難である。仮に既存のガソリン自動車からの二酸化炭素排出量を民生部門と同程度の2分の1まで低減するとした場合でも、自家用車の8割を電気自動車に転換し、貨物自動車の4割を鉄道部門や内航海運にシフトする必要がある。

今後、世界でデファクトスタンダードとなる交通システムはこれまでの化石燃料を前提としたものから、再生可能エネルギーを中心とした低炭素型に転換していく必要がある。今後求められるのは、低炭素交通システム構築に向けたビジョンだ。しかし、国際マーケットでは新たなビジョンづくりは残念ながら欧米企業が先行していた。日本企業にとってはスペックの全て定まった国際競争入札以降の段階からの対応となり、付加価値の低い機器のパーツ提供に留まる傾向が強いことは危惧すべき現状である。

日本総研ではこうした現状を踏まえ、日本企業の海外展開支援を行う研究会、「I-STEP」の立ち上げを企画している。交通分野では、単品の車両の受注に留まらず、LRTやバスとの複合交通システム構築、駅前開発や交通コンシェルジェサービス等を提案していく予定である。最近、都市間交通として新幹線に注目が集まっているが、駅前開発等も含めた都市内交通にも日本の差別性は十分ある。駅ナカ等の駅周辺の不動産開発等に高い関心を示す海外政府は多い。対象国としては、大規模な鉄道交通システムの見直しが進む米国、金融危機以降、巨額の財政投資がインフラに向けられた中国の2つを主な対象としている。また将来、米国に続いてインフラの更新時期を迎える日本をも視野に入れている。

本活動では、日本の差別性のある技術のスペックイン活動、複合システムの組合せ、付加価値の高いオペレーションへの参入、海外PPP市場への参入事業スキームづくりを検討する。こうした動きを通じ国際マーケットにおける日本のプレゼンス向上に少しでも繋げていきたい。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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