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Sohatsu Eyes

中国の環境都市戦略

2009年08月25日 木通秀樹


中国の実質GDP成長率は、4~6月期で7.9%と、8四半期ぶりに前期の伸び率を上回り、欧米日中の中では最も早い回復を迎えた。その内容は、輸出依存のモデルから、内需を拡大するモデルに切り替わっており、世界の工場から中国自身が大きな市場に変わってきたことを示している。政府のリスク、格差のリスクなど様々な問題はあるが、この巨大な市場におけるポジション確保が今後の企業の成長に大きな影響を与えることは間違いなさそうである。

弊社でも、中国市場への参入は早くから取り組んできているが、最近、大きな変化を感じている。それは、中国が先進国に追いつこうとする段階から、中国自身が世界トップの戦略を持つ段階に至っているということだ。その具体例が昨年より取り組んでいる、天津の生態城プロジェクトである。このプロジェクトは、2020年までに、30km2の敷地に35万人が住む世界最先端の環境都市を開発するというものである。弊社はこの計画策定等を担っている。この10年程度で、現在ほとんど人が住んでいない地域に35万人が住む都市を作り、しかもそこは、CO2排出量150t/GDP百万ドル以下、クリーンビル100%、グリーン交通90%など、世界最先端の環境未来都市となる。この地域の高い環境目標は中国の技術だけでは対応が難しく、世界トップの技術なくして実現ができないものとなっている。この点で、世界のトップを目指す中国の環境戦略を体現している都市である。中国では、今後このような生態城をいくつも作ることを計画しているが、天津における開発の成否が今後の環境都市作りに大きな影響を与えることになるだろう。

中国市場では賛否両論あるが、スピードというキーワードが突出していることを感じている。格差のある社会であり、水と食料の問題が発生している地域が多々ある一方で、世界最先端の環境都市をいくつも作り、世界で最も進んだ環境戦略を作ってしまうその都市開発の実行スピードは、驚異的と言えるほどである。まさしく中国版グリーンニューディールとも言える。

環境技術で世界市場に参入したい日本企業にとって、中国市場に参入するためには、このような先端的な都市づくりをターゲットにすることが有力であろう。中国のスピードについていくことは大変であるが、この市場を見逃すことは大きな損失となるに違いない。我々は、この市場を開拓するための研究会をこの9月に立ち上げる予定である。共通の問題意識を持たれ、積極的に市場開拓をされたい方々とともに進めたいと考えている。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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