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学部・学科の再編

2008年05月30日 中原隆一


 大学全入時代で大学数は飽和状態にあると言われながら、相変わらず大学の新設や学部・学科の新設が行われています。平成20年度での大学の新設は10校で、一方学部・学科の新設は文部科学省の認可対象になる分だけでも、学部12校、学科13校となっています(文部科学省HPより集計)。文部科学省への届出で可能な学部・学科の新設になると、学部、学科合わせて100件以上になるようです。これらの学部・学科の新設の中には単なる名称変更だけの場合も含まれていますが、既存の学部・学科構成の再編を伴って行われている場合も多いと推測されます。
 特徴的なのは学問分野として複合領域を目指す狙いからか、あるいは‘受験生受け’を狙っているためか、学部・学科名称が漢字で4文字~6文字と長くなるか、または‘カタカナ化’していることです。

 名称が多様化すること自体は特に問題視することではないと考えられますが、それらの新しい学部・学科において学生が身に付けるべき能力目標が明確にされていて、そのための教育プログラムや体制が準備されていることが必要です。一般的にはその学部・学科の卒業時に学士という学位を授与するわけですから、名称に対応する専攻分野における能力を保証することが求められます。そのためには学部や学科を再編する際、まずどのような能力を身に付けた学生を育成するかが検討されなければなりません。次いで育成するためにはプログラムとしてどのような教育科目、指導方法、スタッフ、ツール等を活用するかが検討されることになります。最後にそのプログラムをどのような層にどのように外部にアピールするかを学部・学科の名称を含めて検討することになると考えられます。

 上記のように多数の学部・学科が新設されている現状では、前述のようなステップで十分に検討して設置されている例は少ないのではないかと考えられます。実際に大学の設置や学部の新設の可否を審査する審議会においても準備作業の不備を指摘する苦言(注1)が発せられ、設置認可においても留意事項を付されているケースが多く見られます。先に学部・学科の名称を決め、次に学内を見渡して担当教員、教育科目を検討し、基準等をクリアするように教育カリキュラムを決定する、学位に対応する能力は卒業研究あるいは必要単位数で対応する、というような取り組みをしていることが多いのではないでしょうか。

 これまでのマスの時代は大学に入学することに重点があり大学は何を教えるかさえ準備しておけばよかったわけですが、ユニバーサル時代は何かを習得するために学ぶのが大学という考え方になり、大学は行った教育の学習成果を問われることになります。学習成果を実現するための教育プログラム、プロセス、ツールへの配慮や検討こそが大学の重要な業務であり差別化のポイントになると考えられます。
 今後学部・学科を再編していく上では、大学は学生に何を学ばせ身に付けさせたいのか、そのためにはどのようなステップで、どのようなメニューで、どのようなスタイルで教育というサービスを提供するのかを、もっと吟味することが必要ではないでしょうか。

(注1) 平成20年2月27日大学設置・学校法人審議会学校法人分科会長コメント
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