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第4回 商品開発におけるリスク・マネジメントのポイント 【大井 大輔】(2008/10/21)
2008年10月21日 大井大輔
1.商品開発部門はサンクチュアリか?
商品開発は、営業や製造と比べて、その成果を測定することが困難であることが多い。例えば、営業部門においては、各市場やエリアなどにどのくらいの人員を投下するか、各市場での顧客毎の取引において、今日現時点ではどの段階まで進んでおり、どのくらいの売上高及び利益が見込まれるのか、といったことが容易に分かるようになってきている。営業などの部門では、その成果が測定されやすく、進捗状況も分かりやすいため、マネジメントもしやすいといえる。
一方、商品開発においては、
(1)商品を市場に出してみなければ、売れるかどうかが分からない。
(2)期待した商品ができるかどうかがやってみないと分からない。
(3)新しいアイディアや技術の開発は、個人のひらめきによるところがある。
など、商品開発の独自の特性ゆえに、これまでの商品開発部門のマネジメントは、商品開発部門長に委ねられていることが多かった。
しかし、成熟した市場においては、経営層が、商品開発に無駄がないかどうか、つまり、商品開発の効率性を検討することが多くなっている。その際、商品開発費による効果の測定として、商品開発費に対する売上高や利益が検討されることが多い。商品開発の中でも、既存商品の改良など、その効果(売上高への寄与)が測定しやすい場合はそれで良いであろう。しかし、多くの商品開発においては、先にあげた業務の特性により、例えば、すばらしい商品が開発されても営業部門との連携が悪く、十分な売上高をあげられないといったこともあり、商品開発の効率性を問う指標として、必ずしも売上高や利益が適切であるとは言えないのである。したがって、以下では、商品開発のマネジメントを行なう上で、営業や製造のマネジメント手法とは異なる視点について検討していく。
2.商品開発のリスク・マネジメントのポイントは、開発資源の充実化!!
商品開発のマネジメントを検討するために、まず、どのようなリスクが存在するのかを考えてみよう。例えば、開発テーマがうまく設定できない、仮に開発テーマを設定できたとしても、その開発がうまく進まないなどのリスクが存在するが、これらのリスクの多くが開発資源(リソース)を開発テーマに適切に配置できなかったことに起因している。ここでいう開発資源とは、「カネ(予算)」だけではなく、「ヒト」「モノ」、そして、「情報」までも含む。つまり、商品開発のテーマ探索において、営業やマーケティング部門から情報を収集できないということも開発資源の欠如によるものと考えられる。従って、商品開発のリスク・マネジメントにおいては、開発資源をいかにして充実させるかが重要である。
営業部門では、投下した資源(人員や宣伝広告費など)に対する売上高という成果によって、その効果が測定しやすいために、インプットである資源とアウトプットである売上高の関係をマネジメントすることになる。しかし、商品開発においては、例えば、売上高をアウトプットの指標としても、開発資源との関係は見えにくく、指標としては適さない。したがって、インプットとアウトプットの読み替えが必要である。
先に述べたとおり、商品開発のリスクは開発資源に起因するものであるので、インプットとアウトプットという概念ではなく、リスクに対する統制活動(コントロール)という概念を用い、開発資源をいかにして充実させるのかが重要となる。従って、開発資源の充実化度合、すなわち、開発資源が適切に増加しているかをモニタリングすることが求められる。モニタリングする指標としては、例えば、対応できる商品開発のテーマ数、難度、商品開発のリードタイムや人材のスキルが用いられることとなる。このような仕組みづくりが、商品開発のリスク・マネジメントの1つなのである。
以上のように、開発テーマや開発資源などをマネジメントすることにより、経営層にとって、商品開発部門は決してサンクチュアリな部門ではなくなる。その結果、営業部門と同様に実態を把握でき、その有り様について議論できるようになるだろう。そのような取り組みを通じて、商品開発の開発資源はますます充実されていくものだと考える。
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