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4-8.保健指導等のアウトソーサー(2)

2007年10月09日 松原 伸幸


 保健事業の新潮流を理解することを目的に特定健診・保健指導のニュービジネス事例を紹介しているが、今回は地域の医療機関等が一丸となって取り組む健康サービスモデルを見る。
 
 特定健診・保健指導を効率的に進める上では医療機関の協力が不可欠である。日本各地で医療情報ネットワーク化の取り組みが進められているが、医療情報を主体としており、保健指導までを考慮した取り組みとはなっていない。仮に保健指導対応の情報インフラを整備したとしても、保健指導は医療機関にとっては採算性が悪く、参加が期待しづらい側面もある。
 米国では統合ヘルスケアネットワーク(Integrated Healthcare Network 以下「IHN」)と言われる組織がある。広域医療圏に存在する複数の病院、リハビリ施設、介護施設などの医療関連施設を経営統合し、そこに開業医が自主的に参加し、地域住民のニーズにあった医療・介護サービスをシームレスに提供する仕組みである。米国では1990年代にIHNへの取り組みが本格化し、現在は全米の主要な医療圏をカバーしている。米国のIHNは電子カルテシステムなどのITを十分に活用しているが、単に医療情報システムネットワークを構築することを目的としているのではなく、地域住民のためにシームレスなケアを効率的に提供することを目指している。
 日本でも全国各地でIHNへの取り組みが行われているが、医療機関の利害が絡むため米国版IHNをそのまま持ち込めるものではない。こうした中、山口県には県内の約300医療機関を接続している“山口県医療情報ネットワーク“がある。「やまぐち健康ネットコンソーシアム」(代表団体;NPO法人やまぐち健康福祉ネットワーク機構)は、このネットワークを活用し、山口大学医学部を中核にしてサービス提供企業、医療機関や関係機関が情報連携することで“やまぐち式Integrated Healthcare Network”を構築しようとするものだ。将来的には、開業医であるかかりつけ医が提供する健康サービスを産業化することを目指している。
 事業内容は次の通りである。

  1. 健常者と生活習慣病予備郡を対象にメディカルチェックの結果により「肥満」「血液」「骨」の観点から医学的根拠に基づいた生活習慣病リスクを分類し、健康増進支援指示書(健康カルテ)を作成する。この実施のために、健康サービスを提供する中核組織であるIHP(Integrated Healthcare Promotion)センターを構築し、山口大学医学部の専門医で構成された医師が健康マネージャとなって指導する。


  2. 管理栄養士・健康運動指導士と連携して、健康カルテに基づいた生活習慣病リスク改善指導や健康維持サービスを提供する。


  3. 公設のやまぐち情報スーパーネットワーク上に築かれた“山口県医療情報ネットワーク”とIHPセンターとの連携を図る効果的な情報基盤を開発する。


  4. これらのサービスを提供するため、医師で構成される健康マネージャ、栄養士・運動指導士で構成される支援スタッフに対する人材育成プラン及びカリキュラムを構築する。


  5. 特定検診・特定保険指導の実施へ向け法人サービス事業として健保組合や国保連合向けにも拡大していく予定である。このために地元の宇部興産健保や宇部市とともに、有効性や医療費削減効果の検証などを研究している。
    地方では財源不足や医師確保難が問題となっているが、大学医学部、自治体などが協力して地域全体の医療の質の向上を目指し、個別に整備した医療情報システムを有効活用すべきである。


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