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4-7.困った被保険者への保健予防プラン

2007年09月19日 高橋 克己


 皆が皆、健康に関心を持ち、進んで生活習慣を改善してくれるならば、保険者も保健予防活動のやり甲斐があろう。だが、積極的支援の対象者は長年の生活習慣を経てメタボ体型になったのであるから、容易に生活習慣を改善すると思えない。中には確信犯的に、頑なに生活習慣を改善しないことを信条としている対象者もいよう。
 特定保健指導は、確信犯的抵抗勢力は後回しにし、生活習慣を改善しようとする対象者に重点を置いて活動するのが効率的だ。コーチングの手法を取り入れる等の創意工夫により、対象者の2~3割は生活を改善するだろう。だが、そこから先は、確信犯的抵抗勢力に近づくにつれ、生活習慣改善組に転向する者は少なくなる。彼らをどうするかが問題だ。

●北風政策
 「喫煙者はガンになる確率が2倍」との疫学データを突きつける常套手段のほか、「今の生活習慣を続けると10年後に糖尿病になる確率は30%」と予測する情報システムもある。いずれも懲らしめて生活習慣を改善させようとする北風政策である。
だが、(1)生活習慣を改善しなければならないことを理解する→(2)だが改善できそうもない→(3)悪いと分かっていながら改められない無能者との烙印(スティグマ)を押されるとの図式が成り立つため、確信犯的抵抗勢力は第一段階の「生活習慣を改善しなければならないことを理解する」ことから拒もうとする。知恵者は、生活習慣以外に遺伝的要素が大きいことを知っていて、それこそ確信犯的に「自分の家系は大丈夫」と確信している。
 健康づくりは自覚が最初の一歩であるが、第一関門から受け入れてもらえない以上、生活習慣改善の可能性は極めて低い。

●太陽政策
太陽政策 脅そうがスカそうが動じない確信犯的抵抗勢力も不規則な生活習慣が最適だとの考えを持っているわけではない。現状の生活ペースを正当化するために屁理屈をこねているのだ。ただ、確信犯ではない大半の人たちも健康維持のために努力をしているわけではない。フィットネスクラブ会員は国民の3%以下と欧米に比べて低調であり、幽霊会員も少なからずいる。生活習慣を改めたくない潜在的抵抗勢力が大勢を占めている。
 最初から、ハードルの高い目標を掲げるのではなく、抵抗勢力が受け入れやすいことから入るのもひとつの手だ。温泉・温浴施設常連者は相対的に医療費が低いとの調査結果がある。仲間内で健康関連の話題をしているうちに、健康に関心を持つ効果があるようだ。積極的支援者にニュージーランドのトレッキングを薦めてはどうか。景観の美しさに魅かれて参加してみたら、体力低下や体重の重さを実感することになろう。運動の必要性を実感すれば、自らフィットネスクラブに通う人もいるだろう。確信犯的抵抗勢力には保健指導の押し付けよりも、自ら気づく機会を提供する太陽政策が有効だと考えられる。
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