クローズアップテーマ
4-1.戦略的保健予防プラン
2007年08月09日 高橋 克己
平成20年度からの特定健診・保健指導の実施に向け、医療保険者は19年度に「特定健診等実施計画」を策定する手順となっている。特定保健指導まで含めると健保財政への負担は大きいが、やるからには費用対効果の優れた保健予防プランが望まれる。
保健予防活動への取り組みは一部の熱心な組合とその他の団体に二極分化しているとも言われている。だが、熱心だとされる組合以外に保健予防活動への取り組みを尋ねると、結構、さまざまな事業を実施している例もある。ただし、さまざまな取り組みはしているものの一本筋が通っていない、費用対効果が見えないままに総花的な事業展開を行っていて自らの事業内容に自信が持てていないようだ。
健保組合や企業には、健康管理は本人の責任であり、第三者が介入すべきではないとの考え方がある。健保の疾病予防も人間ドックの補助金等に回ることが多く、その後の生活習慣改善にまで介入することは回避している。だが、従業員がワークライフバランスをとる上で企業の関与が不可欠であるのと同様に、健康な生活を実現するためにも企業の関与が不可欠である。さらに、社員が健康でいることは企業業績にも寄与することから、積極的に社員の健康増進に取り組むヘルシーカンパニーを目指す企業も増えている。従業員の健康づくりに熱心な企業であるとのイメージは人材確保難に対する対策のひとつでもある(少なくとも過労死事件で受ける企業のマイナスイメージは防止しなければならない)。
特定健診・保健指導に関しては、財源の裏づけが乏しく、保健指導等による効果も不明確な中、国が取り組むべき事業を健保組合に転化するものだと消極的に受け止める向きもある。だが、社員・被保険者が健康になることでマイナス要因は発生しない。要は効果の上がる事業を実施できるか否かであり、費用対効果の優れる事業なら、これを機に積極的に展開する意義は大きい。
企業・健保組合は「特定健診等実施計画」の最低限のプランにとどまることなく、従業員の心身の健康状況を改善し、もって生産性を上げる戦略的な保健予防プランを作成すべきだ。ワークライフバランスにも踏み込み、従業員の生活水準の向上と企業業績のバランスを取る戦略が求められている。
この際のポイントは[1]企業経営者(健康経営に対する意識)と従業員(健康管理に対する意識)双方の意識改革を図ること、[2]家族も巻き込んだ保健予防活動とすること(家族の健康管理と家族全員で食生活・生活習慣を改善する)、[3]お仕着せの指導よりも自発的な活動を促すこと、[4]そのためにもプッシュ型で楽しみのある活動とすること等である。
また、医療保険組合の事務局スタッフだけでは対応し切れないため、効果的なアウトソーシング先を確保する必要もあろう。健保組合等はプラン策定と効果測定に軸足を取り、実行はアウトソーサーを有効活用する役割分担をして少ない人員で効果的な事業展開を図ることが肝要だ。
本シリーズでは、先進的な健康保険組合の取り組み、保健指導等のアウトソーシング先の事業、ディジーズマネジメント先進国のアメリカの事業サービス等を紹介しつつ、企業や健保組合が取り組むべき方策を提案する。