「創発戦略センター」所長の井熊均です。 (2005/01/25) |
ヨーロッパに行くと昔からの古い町並みに出会うことができます。世界中の人達を魅了するパリの町並みはナポレオン三世の時代に作られたものです。イギリスでもビッグベン、大英博物館など荘厳な建築物に出会うことができます。そうしたヨーロッパの町並みの中でも考えさせられるのはドイツです。日本の主要都市は第二次世界大戦の戦火で焼き尽くされ、伝統的な建造物の多くを失いました。しかし、大戦中ドイツに投下された爆弾の量は日本よりはるかに多いものであったのにもかかわらず、ドイツには日本より多くの伝統的な建物があるように見えます。ドイツの人は戦後の廃墟の中で、かつての美しい町並みを取り戻す努力をしたからだといいます。戦後日本が同じような努力していたのであれば、東京の中心部などには明治以来の伝統的な建築物が並んでいたのでしょう。 | | |
政府の経済財政諮問会議が今春まとめる「日本21世紀ビジョン」では、人口減少や高齢化が進む中で、世界中の人が訪れたい国を作ろう、とされるということです。国の魅力は様々な面で語ることができますが、美しい町並みは一つの重要な要素であると思います。パリに高層建築が建たないのは、それがパリの価値を守るという意味で経済的にも合理的だからだ、という話を聞きました。 |
| ヨーロッパの国々は太平洋地域の発展に比べ停滞しているように語られていた時期があります。しかし、最近では伝統的な建物の中で近代的な機能を維持しながら生き続ける姿に、新しさを発展の証とする姿より持続的なものを感じます。ビジョンが目指す日本の将来を実現するためには、日本人が愛すべき町とは何かを考えていかなくてはいけないのだと思います。 [写真左] 大英博物館に行った時の写真です。 | |