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地球温暖化に対応した「賢い」まちづくりへの期待

2009年05月08日 山本 辰介


 地球温暖化への対応においては、温暖化効果ガスの削減をはじめとする根本的な対策が最も重要ではあります。これと同時に、現実の経済社会活動の中ではどうしても地球環境への負荷は避けられないという状況に向き合って、いかに対応していくかを考えることも、大変重要になります。

 国や地方自治体などの行政機関においても、本来の地球環境政策と並行しつつ、この視点を政策立案に組み込んでいきたいところです。

 米国のボストン市都心部で行われた高速道路地下化プロジェクトにおいては、地下化に伴う道路拡幅と同時に、同じ道路財源からの支出により、都心外縁部の地下鉄駅に大規模なパーク・アンド・ライド用駐車場が建設されました。車中心のライフスタイルからの脱却は難しいという現実はあるものの、車の利用距離を少しでも減らす使い方に変えようとするもので、理想と現実のバランスを取ろうという発想が盛り込まれています。

 この事例を見ていると、特に環境との関連性が強いまちづくり政策において、現実的な対応の必要性を感じます。一例として、新規の住宅開発がどうしても求められる場合に、開発に伴う環境への影響抑制や完成後の「見た目の緑の多さ」といった視点に限らず、そこで暮らす人々の生活を考慮したうえで、日照を最大限有効活用できる住宅配置や水需要が抑制できる緑地計画、新たに必要な道路・下水道整備(+その後の維持)の最小化など、ソフト面や長期的な視点も考慮に入れて計画地選定や開発内容を検討していくことが考えられます。

 単に、「緑地を多めに整備したので、この住宅開発は地球に優しい」という発想から、それをどう使うのかという発想を加えることにより、場合によっては、「手間をかけても既成市街地を再整備して、より地球環境に優しい生活を実現する計画の方が望ましい」という代替案が出て来る可能性もあります。そしてこの考え方は、環境負担だけではなく、自治体の財政負担の軽減にも通じると思われます。

 同様に、まちづくりに限らず全ての行政分野においても、今後、関係する知見を広く導入しつつ、地域で実現でき、かつ現実に効果のある政策の体系的な検討と整理が必要ではないでしょうか。
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