コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

クローズアップテーマ

経団連等意見広告とWWF

2009年03月25日 三木優


 2009年3月17日の朝刊各紙に「考えてみませんか?私たちみんなの負担額」という大きな見出しの意見広告が掲載された。この意見広告は、日本経団連や電事連などの経済・業界団体の連名で出されたもので、以下の主張を行っていた。

・日本は世界トップレベルの低炭素社会
・3%削減の場合、世帯あたりの負担額が105万円
・これまでの努力を考慮しない過大な削減目標は国民全体に痛みを強要
・次期枠組みでは、主要な温室効果ガス排出国の参加が必須

 これに対して、WWFは以下のようなコメントを公表し、この意見広告を正面から批判している。

・105万円は2005年から2020年までの費用であり、1年あたり7万円
・費用は各世帯が全て負担するものではない
・105万円の根拠は試算の一つ
・日本は購買力平価で見れば世界トップレベルの低炭素社会ではない


 この意見広告とWWFのコメントは、どちらも間違った事は言っていない。しかし、それぞれの地球温暖化防止に対するスタンスが異なる事により、一つの事象を如何様にも説明できるという事を良く表していると感じる。すなわち、どちらの意見・コメントも「地球温暖化防止にある程度のコストが必要」と言う事は認めているのである(ただし、WWFは対策の結果、利益が生じることを強調している)。


 次期枠組みにおいて、先進国がどのような目標を課せられるのかは不透明である。しかし、少なくともその水準は第一約束期間と同じかそれ以上にはなると思われる。その時、一般家庭や普通の企業は、目標達成のためのコストを負担する必要がでてくる。オバマ大統領はグリーン・ニューディールという流行を生み出して、上手く誤魔化しているし、EUでは、気候変動を止めなければ、水没あるいは寒冷化して破滅するというIPCCのシナリオが強迫観念となって国民が負担を受け入れる素地が作られている。

 日本では、どのようにして国民に納得させるのだろうか。米国の受け売りでグリーン・ニューディールで押し切る手段もある。しかし、どのような「説明」をするにしても国民に中期目標を達成するためには、今までのようなやり方では無理な事とコスト負担を強いる事は、早期にきちんと説明すべきである。


 今回の経団連等の意見広告は、地球温暖化防止のコストをしっかりと考えるための良い契機になったのではないだろうか。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ